雨音が歌う。優しく甘く悲しく切なく。

七不思議。この単語から連想するものは何だろう。
それは或いは今のような、夏の学校の向日葵。消毒液の溶けたプールの匂い。
暗いトイレの湿気。
この作品の七不思議は一味違う。何か違う。何が違う。どうして違う。
恐らく、この最後の「どうして」が解きほぐれた時、その全容が姿を現すのだろう。
狂言回しのような役割に見える蒼雪は、能の蘊蓄を語る。これは作者が役者でもあるからだろう。古く深く、海に沈んだ宝を引き上げるような謎解きにそっと寄り添う。
作中では雨が降っている。誰かの涙のようだ。
雨音は歌う。優しく甘く悲しく切なく。

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