第4話
「知っているかい? 黎明期の掃除ロボットは、単なる丸い円盤だったとか。その少し後に持て囃された配膳ロボットも、猫型ロボットと言いながら、ただ配膳ワゴンの上に猫を模した顔がついていただけとか」
「ええ、聞いたことがあります」
「それら全ての役割を担える究極の家電。そんな謳い文句で現在みたいな家事ロボットが普及し始めたのは、23世紀になってからだそうだ」
一見無関係な話に聞こえるかもしれないが、彼女はきちんとポイントを理解していた。
「でも、あまりに精巧な外見の家事ロボットは考えものですよね。まるで人間みたいに扱ってるうちに、本物の恋人や奥さんって思い込んじゃう……。『俺の嫁』症候群ってやつでしょう? それで田中さん、独身なのに嫁とか愛妻弁当とか言ってたのかあ」
彼女の言葉に頷きながら、私の視線は、注文カウンターの方へ向いていた。「Aセットです。どうぞ」などの音声を発しながら、女性そっくりのロボットたちが食べ物を人間に渡している。
カウンターの奥にある厨房で調理しているのも、同じく女性を模したロボットたち。私の目には、どれも同じ外見にしか見えないが……。
私と同様にロボットたちを眺めながら、隣に座る後輩がふと呟く。
「家事ロボットが嫁扱いなら、それを買い換える時って、田中さんにとっては離婚と再婚になるんですかね?」
(「家電の反乱」完)
家電の反乱 烏川 ハル @haru_karasugawa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
カクヨムを使い始めて思うこと ――六年目の手習い――/烏川 ハル
★209 エッセイ・ノンフィクション 連載中 298話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます