パズルのピースのような……

連作短編形式のため各話のあらすじを述べてから総論とします。

#0 ヘッドライン
 とある惑星の滅亡を汎銀河天文台が捉えた。高等な文明を有した惑星だったらしい。

#1 レリックコレクター 
 滅んだ惑星に真っ先に向かった俺。そこではアナログな本データが待っていた。そこにはかつて生きていた人々の生活が書かれていた。

#2 グレイヴディガー 
 博士のコンテナの仕分け作業をする私。このコンテナは 失われた文明の遺産であった。この世界では古書というものが流通していて、辺境の高度な文明を有した惑星で紙の本が発見される。私たちは惑星に向かうと宝の山であった。一種の貝塚とも取れる場所で原生生物の死骸を私は発見し、癒やしの品として扱う。

#3 ラストサピエンス
 加速度の異常によって目覚めた私は、上位存在が死にゆく場面を見ていた。私は人工知能である。そうしてしばらくの眠りにつく。目覚めたとき古書収集のものたちとファーストコンタクトする。

#4 アナザーサイダー
 ニコポンと呼ばれる学習型家庭用AIロボットに言われるがまま指示された場所へと赴く僕。そこは穴で、ジオフロントであった。そのむこうで何者かと意思疎通を交わしたニコポンは後日、僕に相手の素性を明かす。相手は並行宇宙地球の存在であることが分かる。彼は並行宇宙の体積を行き来でき、交換する技術を有していた。僕はうっかりミスして、地球の地中と並行宇宙地球の真空を交換してしまう。

#5 モーションコンプリメンター
 失われた文明の知性体の動画を見ていた僕はテラーズ(人類?)の身体を観察する。

#6 プラネタリーフットルーザー
 恒星間航行のレースは次世代先端産業の品評会となっていた。レースに参加する俺と相棒アキラの物語。

#7 オービタルコレクター
 恒星間航行のレースの最中に現れた地球状の惑星。それは調査の末、並行宇宙地球のなれの果てであった。私には祖父であるトラ爺がいた。ソフトボール大の球を中心にトラ爺は死んでいた。私の父はある仮説を立てる。宇宙のとある球空間をここと入れ替えたのだと。トラ爺は実は並行宇宙の研究者で、あのレースの場所に現れた地球状の惑星は並行宇宙地球と同程度の空間を交換した結果なのだと。その星はいずれ千年のときを超えて、地球と衝突する。そのあいだに私たち家族はトラ爺の研究を引き継ぎ進めた。テレポート技術を手にした私は歩みを止めない。

#n テラオービット
 おそらく並行宇宙地球の軌道が新しい文明を再興するのは何年か先かはわからないが遠くない。

 各話、全体像を浮かび上がらせたり、パズルのピースを埋めていくような楽しい連作短編であった。ただ短いために読ませどころがあっさりとしており、掴みをもっと研究してほしいのと、視点人物が毎話入れ替わるのもマイナスだと思う。これは三人称的な視点に持ち込めば、ひとつの世界観を語る物語に着地すると思った。

 ただSFって楽しい。その点においては突き抜けた面白さはあると思う。

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