2010年代前半までの従来型ラノベが好きでした。なろう系は残念ながらハマれませんでした。溺愛、スローライフ、チート⋯⋯どれも好みに合わない。刺さらない。
従来型ラノベはホラー、ミステリー、SFなどジャンルも内容も多種多様でした。いわゆる非なろう系作品が多数派でした。あの頃は本当に読むのも買うのも楽しかった。
しかし2010年代後半からなろう系ラノベがラノベコーナーを埋め尽くし、従来型ラノベは今や書店の本棚の片隅や中古本屋にしかない状態。とても寂しいです。
ライト文芸のジャンルは幅拾く従来型ラノベの内容に近いものがたくさんあり、私にとってはここが最後の砦になってます。今後ライト文芸までなろう系に染まったら、もう居場所がありません。
従来型ラノベ繁栄の復活は、WEB小説からの拾い上げが主流になった今は、たぶんもう無いのでしょう。泣きたい。
まあ、仕方ないですよね。
そもそも異世界ものとか、ファンタジーの世界観だけでなくゲームシステムの基礎知識もあることが前提だったりしますし。ゲームやアニメで経験を積んで出直してこい、って子供に言うのは酷です。
ライトノベルが読書の入り口だとすると、好きな作家の他の作品を追っているうちに他のジャンルも読むようになることは多いと思うので、作家は色々書いた方がいいですね。
かつてそうやって、吸血鬼ハンターDで菊地秀行を追い始め、妖魔淫獄とかに誘導されて性癖歪んじゃった団塊ジュニアがたくさんいますしね。
あ、そうか。その世代が今ラノベ書いてるから、ラノベにやたらエロが…。
単に自作の書籍化を狙うだけでなく、執筆で身を立てたいと思っている書き手は、読むべき評論だと思う。
統計データ、つまり数字に基づいた分析には説得力がある。
ただ、かなり歴史的な流れを追っているため、若い人にはよく分からない部分もありそう。
初ラノベが氷室冴子や久美沙織だった私からしたら、その歴史も承知しているため非常に納得できるものだった。
(もちろん、全てに賛同できる訳ではないが)
出版社から「飯の種」として消費される書き手にならず、ビジネスパートナーとして長く付き合いたいと思われる書き手になりたいと考えている人は、絶対に読むべき評論。
執筆者のらんた氏の経歴が気になる。
絶対に、業界人だよね。
他の方々の書かれているレビューの通り、しっかりしたデータに基づいたライトノベル論が書き手の心に刺さります。
しかし特筆すべきは作者様の熱いラノベへの「想い」を感じる事。ただ淡々と現状や過去のデータを書き記しているだけではなく、「このままじゃいけない」という熱い意志を持って読み手に訴えかけるその熱量こそが、この作品の真骨頂ではないでしょうか。
カチンとくる事もあるでしょう、「いや間違っている」と反論したい方もおられるでしょう。ですが美辞麗句で固められた論評は所詮忘れられるもの、この文章を見た書き手様が、それにどう賛同し、どう反発して執筆活動を盛り上げていくのか。
まるで討論しているような内容の創作論、読んで絶対に損はないです。
ライトノベルが中高生を見なくなった。今では青い鳥文庫に中高生が集っている。それがライトノベル業界の衰退の根幹だと冷徹なデータと共に言い切る、中々読めない評論です。なろう系が氾濫してるから――などの垢に塗れた評論とは格別です。
僕は子供の頃から青い鳥文庫、それから電撃富士見スニーカーというお手本のような道を辿って育ってきた人間なので、それらの名前が散見されるこのレビューには凄く共感してしまいました。最近では買うのは昔のライトノベルばかり。挙句には昔夢見た理想のライトノベルを自分なりに書いたり。大人の自分でさえ今のライトノベルには興味が湧かない。中高生ならなおさらだろうと、評論を読みながら思ってしまいました。
ラノベ業界には若者を引き付ける夢がなくなった。要約するとこのレビューで言いたいことはそういうことで、それこそが今のラノベ業界の問題の本質なのだろうと僕は感じました。
表紙の過激化とか凄まじいですからね……。