冒険者、危険と隣り合わせのその日常

パーティを組まず一人で活動するいわゆる「ソロ冒険者」である主人公の元に持ち込まれる様々な依頼……他冒険者とのトラブル裁定、昇格試験の立会い、仲間を失った冒険者のフォローなどなど、冒険に出てモンスター退治するにとどまらない様々な事件を、顔見知りの仲間たちと一緒に解決していく連作形式のストーリー。
キャッチコピーだとまるで恋愛ロマンチックコメディに終始しているかのように想像してしまいますが、読んだ印象としてはそこに留まらずに依頼を受けて人間関係のトラブルを次々解決していく、ファンタジー版探偵ドラマと言った趣きだったように思います。主人公が決していかついタフガイキャラではないので、ハードボイルドという言い方をするとさすがに語弊がありますかね……。
冒険的な要素も存分に用意されていて、ソロに特化した戦い方でモンスターや盗賊相手に切った張ったを存分に繰り広げる戦闘描写など、ファンタジーものらしい醍醐味も充分だったように思います。杖からマジックバレットを早撃ちする主人公の得意技も異色のガンアクション風味で、なかなか面白かったように思いました。
魔王討伐やダンジョン攻略といった大きな目的があるわけではなく、冒険者ギルドに集う、日々依頼をこなす冒険者たちの危険と隣り合わせの日常や人間模様を、実力者ながら最強勇者というわけでもない、ソロ冒険者という少し特殊な主人公の立ち位置から淡々と切り取っていくような物語だったように思います。
「昇進の話」までが本編とのことですが、それ以降も番外編やサイドストーリーというわけではなくて、各エピソードごとに起承転結がついて一区切りつくようないわゆる連作スタイルにて物語は継続されています。
このまま連作ものとして続いていって欲しい気もしますが、何か長編的なもう一つ大きな展開がこれからあってもいいのかな?とも思いました。

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