10

 ざらりとした感触で目を覚ました。

「ん……」

 野良猫が、わたしの頬を舐めていた。

 起き上がる。昼の公園だった。ベンチで横になっていたようだ。

 蝉の合唱がうるさい。

「猫宮くん……?」

 見渡しても、彼の姿はなかった。

 不思議と、体調は、良くなっていた。

「にゃあん」

 わたしを起こしてくれた猫が鳴く。

 そういえば、猫宮くんって、金魚好きだったり、撫でられるの好きだったり──どことなく猫っぽかったなぁ。

「……もしかして、猫宮くん?」

「にゃ」

 頭を撫でれば、気持ちよさそうに目を細めた。

 ……似てるなぁ。

「ありがと」

 猫に顔を近づけると、鼻を、わたしの鼻にくっつけてきた。そして、ぴょんとベンチから降りてどこかへと行ってしまう。

「さて、と」

 わたしはカバンを持って立ち上がる。

 塾に向かって、足を進めた。

 ……繰り返してわかった。

 宿題を残したままの、夏休み最終日は繰り返してもしんどいだけだって。

 頑張るのは嫌いだけど、面倒なことやしんどいことはもっと嫌だ。

 わたしは塾の自習室で、その日中に宿題をすべて終わらせた。

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