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 二学期初日──わたしはおおらかな気持ちで登校できた。

「おはよ、結局、宿題終わったのか?」

 同じ塾で、わたしが奮闘していたのを知っている乾くんが話しかけてきた。

 昨日、メッセージの返信を忘れてしまったので、塾で謝ったら許してくれた。

 わたしは親指を立てる。

「なんとかね」

「すげぇな」

 乾くんはわざとらしく拍手をして、自分の席に去っていった。

 チャイムが鳴り、担任の先生が教室に入ってきた。

「みんな席についてー。転校生を紹介します」

 転校生?

 一気にクラスがざわついた。

 先生の後ろについて現れた転校生に、わたしは目を見開く。

「じゃあ、自己紹介してください」

 黒板に転校生の名前を大きく書き終わった先生が、転校生にうながす。

 転校生はうなずいて、正面を向いた。

「猫宮想です。よろしくお願いします」

 ね、猫宮くん!?

 実在したの!?

 先生に指示された席は、わたしの隣。

 着席した猫宮くんは、驚いて口をパクパクするわたしを見て、ニヤリと笑った。

「来ちゃった。これからはいつでも頼ってね、華恋」

 そう言って、彼は目を細める。

 その顔は、公園に住み着いている野良猫に、どことなく似ていた。

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猫宮くんの白昼夢 よこすかなみ @45suka73

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