5
公園から出ていく前に、夕ご飯用に、焼きそばだけ買った。
猫宮くんが連れて行ってくれたのは、さらに遠くの神社だった。
長い階段を登った頂上にある。
運動があまり得意ではないわたしは、息切れしながらなんとか登りきった。
日はとっくに暮れていた。
「はぁ、やっと着いた……」
「お疲れー!」
階段の一番上に、わたしたちは腰を下ろした。
運動したせいか、お腹がぺこぺこだ。
焼きそばを食べると、夏の味がした。
「もうそろそろかな」
食べ終わった頃、猫宮くんがつぶやいた──同時に、花火が打ち上がった。
……ドォン!
「わぁ……!」
めちゃくちゃ大きいわけじゃないけど、確かにここは穴場かもしれない。
こんなにきれいに花火が見えるのに、誰もいない。
「すごくきれい! ありがとう、連れてきてくれて」
「どういたしまして」
花火に興奮したわたしに、猫宮くんは嬉しそうに笑った。
ドキッと、心臓が跳ねる。
階段に置いていたわたしの左手に、猫宮くんの右手が重ねられた。
顔が、熱い。
「ねぇ、華恋」
「な、なに……?」
心臓の音なのか、花火の音なのか、もうわたしにはわからない。
「また会おうよ」
猫宮くんが言う。
嬉しい。
わたしも、猫宮くんとこれっきりなんて嫌だと思っていた。
……でも。
「夏休みが終わったら、もう会えないよ」
学校が始まれば、塾も始まる。
学校も違う猫宮くんと会える時間なんて、あるのかな。
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