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「次はどこに行く?」
猫宮くんと、当たり前のように手を繋いで、屋台の散策を再開した。
手を繋がれる度にドキドキするわたしと違って、彼は至って平然とした顔をしている。
意識しちゃうの、わたしだけなのかな……。
「華恋、あれは? 欲しいものある?」
猫宮くんが指差した先には、射的の屋台に並んでいる景品たちだった。
ゲームやお菓子、ぬいぐるみまで、多様な種類のものが置かれている。
その中で、小さな猫のマスコットに、わたしは惹かれた。
「猫のやつ、欲しい!」
スクールバッグに付けたい!
「わかった、獲ってあげる」
ニヤリと口角を上げて、猫宮くんは射的の屋台に向かった。
屋台のおじさんにお金を払って、射的のコルク銃を構える。
その姿が、あまりにも様になっていて。
か、かっこいい……!
猫宮くんは狙いを定めて、引き金を引く。
パン!
玉は五発。
「…………」
「…………」
彼は、全弾外した。
「ごめんね……」
しゅんとした表情で、謝ってきた。
頭に垂れた耳が生えてるようにすら見えてくる。
「いいよ、頑張ってくれてありがとう」
わたしはお礼を言って、彼の頭を撫でた。
猫宮くんは、気持ちよさそうに撫でられている。
……なんだか、この感じ、どこかで……。
思い出せない。
誰かにも、同じようなことをして、似たような反応をされた気がするのに。
でも、人の頭を撫でた経験なんて、あんまりないはず……。
「このあと、花火大会があるの、知ってる?」
猫宮くんに話しかけられて、思考はそこでストップした。
「花火大会?」
「うん、ついてきて」
猫宮くんがわたしの手を引いて、歩いていく。
宿題がまだ終わっていないのに、どんどん帰りが遅くなる。
カバンがずっしりと重くなった気がした。
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