目を覚ますと、夕方の公園だった。

「あ、起きた」

「えっ」

 猫宮くんに膝枕をされていた。

 ……あれ?

 わたし、猫宮くんと夏祭りに行って、花火を見て、それから……。

 それから、どうしたんだっけ?

 ……さっきまでのは、夢?

「ボク、猫宮って言うんだ。キミは?」

 ……知ってる。

 さっきまでの出来事は、予知夢ってこと?

 考えがまとまらない。

「どうしたの? 名前は?」

 首をかしげている猫宮くんに、わたしはハッとする。

 そうだ、名前を聞かれていたんだった。

「わ、わたしは香山華恋……」

「華恋、このあとヒマ?」

 聞き覚えのあるセリフしか言われない。

 わたしは前と同じように、「ヒマだよ」と答えた。

「じゃあ、遊びに行こうよ。ちょっと歩くけど、夏祭りがあるんだ、きっともう始まってる」

 誘われるままに、わたしは夏祭りに連れて行かれる。

 彼は、金魚を美味しそうと言った。

 彼は、射的を全部外した。

 全部、夢と同じだった。

「このあと、花火大会があるの、知ってる?」

 ……知ってるよ。

 そして、案内された場所は、やっぱり長い階段が続く神社だった。

 ──夢じゃない。

 あまりにも、すべてが同じすぎる。

 わたしは、同じ日を──夏休み最終日を繰り返している。

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