7
……ドォン!
花火が打ち上がり始めた。
「ねぇ、猫宮くん、嘘みたいな話、聞いてくれる?」
「聞くよ、何?」
「わたしたち、同じ日を繰り返しているの。わたし、覚えてる。猫宮くんに看病されて、夏祭りに行って、花火を見たこと」
「…………」
「あ、頭がおかしくなったと思われるかもしれないけど……」
「そうだよ」
え。
……そうだよって言った……?
猫宮くんはまっすぐと、真剣にわたしを見つめていた。
「もう何回も、繰り返してる。一回二回じゃない。数え切れないくらい」
……何回も?
数え切れないくらい?
これが初めてじゃないってこと?
「ど、どうして? 猫宮くんが、繰り返しているの?」
「…………」
猫宮くんは、何も言わない。
「ね、猫宮くんがやってるなら、もうやめようよ」
「……本当に?」
「え?」
「本当に、やめていいの?」
……どういう意味?
猫宮くんに問われて、わたしは動揺する。
同じ日を繰り返しているなんて、やめたほうがいいに決まっている。
明日が来ないなんて、未来がないのと一緒だ。
「……だって、夏休みがずっと続くんだよ? 華恋は、夏休みが終わってもいいの?」
ぎくり、と肩が震えた。
──それは、そうかもしれない。
夏休みがずっと続くのなら、学生にとって一番いいかもしれない。
……でも、何かが引っかかる。
わたしは、この夏休みがずっと続くことの、何かが嫌だ。
まだ、やり残したことがある。
終わってないことがある。
それを終わらせていないのに、夏休みが続くのは、嫌だ。
──それが、何かはわからない。
「夏休みが終わったら……」
花火が打ち上がって、わたしの言葉はかき消された。
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