……ドォン!

 花火が打ち上がり始めた。

「ねぇ、猫宮くん、嘘みたいな話、聞いてくれる?」

「聞くよ、何?」

「わたしたち、同じ日を繰り返しているの。わたし、覚えてる。猫宮くんに看病されて、夏祭りに行って、花火を見たこと」

「…………」

「あ、頭がおかしくなったと思われるかもしれないけど……」

「そうだよ」

 え。

 ……そうだよって言った……?

 猫宮くんはまっすぐと、真剣にわたしを見つめていた。

「もう何回も、繰り返してる。一回二回じゃない。数え切れないくらい」

 ……何回も?

 数え切れないくらい?

 これが初めてじゃないってこと?

「ど、どうして? 猫宮くんが、繰り返しているの?」

「…………」

 猫宮くんは、何も言わない。

「ね、猫宮くんがやってるなら、もうやめようよ」

「……本当に?」

「え?」

「本当に、やめていいの?」

 ……どういう意味?

 猫宮くんに問われて、わたしは動揺する。

 同じ日を繰り返しているなんて、やめたほうがいいに決まっている。

 明日が来ないなんて、未来がないのと一緒だ。

「……だって、夏休みがずっと続くんだよ? 華恋は、夏休みが終わってもいいの?」

 ぎくり、と肩が震えた。

 ──それは、そうかもしれない。

 夏休みがずっと続くのなら、学生にとって一番いいかもしれない。

 ……でも、何かが引っかかる。

 わたしは、この夏休みがずっと続くことの、何かが嫌だ。

 まだ、やり残したことがある。

 終わってないことがある。

 それを終わらせていないのに、夏休みが続くのは、嫌だ。

 ──それが、何かはわからない。

「夏休みが終わったら……」

 花火が打ち上がって、わたしの言葉はかき消された。

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