目を覚ますと、夕方の公園で、猫宮くんに膝枕されていた。

 起き上がって猫宮くんを見る。

「あ、起きた」

 ニコニコした猫宮くん。

 ──思い出せ。

 わたしは、確かに、何かをやり残しているんだ。

 最初に、何かを間違えたんだ。

「ボク、猫宮って言うんだ。キミは?」

 猫宮くんがいつも通り、自己紹介をする。

「わたしは香山華恋……」

「華恋、このあとヒマ?」

 この問いにイエスと答えたから、わたしたちは夏祭りに行って、花火を見て、また夏休み最終日を繰り返すことになったんだ。

 わたしはどうして「ヒマだ」と答えてしまったんだ?

 ──そうだ。

 わたしは、嘘をついた。

 ヒマじゃないのに、ヒマだと言った。

 どうして?

 現実から、逃げたかったから。

 目をそらしたから。

「……ヒマじゃないよ」

 わたしは猫宮くんと目を合わせる。

「夏休みの宿題、やらなきゃいけないから」

 わたしの隣──猫宮くんとは反対側に、宿題の入ったカバンがあった。

 猫宮くんは、観念したように、目をつむった。

 ふぅ、とため息をつく。

「……そっか」

 猫宮くんが立ち上がる。

 わたしはカバンを抱き抱えた。

「じゃあ、家に帰ろう」

 夏祭りに誘ったときと同じように、わたしに手を差し出した。

 わたしはその手を取って、一緒に歩き出した。

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