8
目を覚ますと、夕方の公園で、猫宮くんに膝枕されていた。
起き上がって猫宮くんを見る。
「あ、起きた」
ニコニコした猫宮くん。
──思い出せ。
わたしは、確かに、何かをやり残しているんだ。
最初に、何かを間違えたんだ。
「ボク、猫宮って言うんだ。キミは?」
猫宮くんがいつも通り、自己紹介をする。
「わたしは香山華恋……」
「華恋、このあとヒマ?」
この問いにイエスと答えたから、わたしたちは夏祭りに行って、花火を見て、また夏休み最終日を繰り返すことになったんだ。
わたしはどうして「ヒマだ」と答えてしまったんだ?
──そうだ。
わたしは、嘘をついた。
ヒマじゃないのに、ヒマだと言った。
どうして?
現実から、逃げたかったから。
目をそらしたから。
「……ヒマじゃないよ」
わたしは猫宮くんと目を合わせる。
「夏休みの宿題、やらなきゃいけないから」
わたしの隣──猫宮くんとは反対側に、宿題の入ったカバンがあった。
猫宮くんは、観念したように、目をつむった。
ふぅ、とため息をつく。
「……そっか」
猫宮くんが立ち上がる。
わたしはカバンを抱き抱えた。
「じゃあ、家に帰ろう」
夏祭りに誘ったときと同じように、わたしに手を差し出した。
わたしはその手を取って、一緒に歩き出した。
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