2
目を覚まして、最初に入ってきた景色は、夕方の公園だった。
……寝ちゃったのか。
いや、寝たというより、気絶のほうが近いかな。
ゆっくり起き上がる。
ポトリ、と額から何かが落ちた。
濡れた、わたしのハンカチだった。
「あ、起きた」
「えっ」
知らない男の子が、隣に座っていた。
気を失う前に、声をかけてきた男の子だ。
……もしかして、わたし、膝枕されてた?
「よかった。もう大丈夫そうだね。ごめんね、勝手にハンカチ、使っちゃった」
彼は、なんでもない風に、にこりと笑う。
「か、看病してくれたの?」
「看病って言うほどのことはしてないけど、まあ、うん」
「あ、ありがとう……」
は、恥ずかしい……。
見ず知らずの男の子に膝枕されて、寝ていたなんて。
中学二年生にもなって、何をしているんだろう。
「ボク、猫宮って言うんだ。キミは?」
「わ、わたしは香山華恋……」
「華恋、このあとヒマ?」
急に下の名前で呼ばれて、ドキッとする。
男の子に、名前で呼ばれるなんて、初めてかもしれない。
「ひ、ヒマ……」
反射的に、そう答えてしまった。
ヒマなんて、嘘だ。
本当は、明日までに、宿題を終わらせなくちゃいけない。
夕方になってしまった以上、今すぐに家に帰るか塾に行って、死ぬ気で宿題を始める必要がある。
緊急事態だ──やる気の起こらない、緊急事態。
「じゃあ、遊びに行こうよ。ちょっと歩くけど、夏祭りがあるんだ、きっともう始まってる」
猫宮くんは立ち上がって、わたしに手を伸ばした。
……夏祭り。
なんて甘い響きだろう。
「……うん、行きたい」
わたしは、その手を取った。
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