第10話 (終)

 彼の隣に、いることにした。

 彼は困惑しているけど。まぁ、慣れると思う。私自身まだ慣れてないけど。彼女じゃなくて、彼。


「いつまでいるつもりだよ」


「一生」


 こういうやり取りを、何回かしている。

 テレビ。まだ、わたしがかつて所属していた伏魔殿のニュースを流していた。どうやらよく分からない何か違法なものが出てきているらしい。


 彼が戻ってきた。


「仕事?」


「いや。仕事がしばらく無いっていう電話。バイトテロ動画にも顔は映ってないけど出演してるし」


「大丈夫なの?」


「まぁ。私が手持ち無沙汰ってことは世界が平和ってことだから」


「生活費は。わたし稼ごっか?」


「要らないよ」


 彼が、ニュース映像を指差す。


「あれを作り出したのは、私。ああいうのを、専門にしている」


 そして、指を彼自身に。


「そんなのが金の無心してきたら、たまったもんじゃないでしょ。機密保持も含めてだから、普通に一生暮らしていけるよ」


「そうなんだ」


 でも。


「仕事は、続けるんだよね」


「まあ、趣味だからね。ああいうのを、無くしていくのが」


 ニュース映像。まだやってる。


「ねぇ」


 彼。ちょっと、もじもじした顔。


「今日は、女扱いしてほしい」


 あっ。彼じゃなかった。今日は彼女だった。


「わかった」


 彼女と私のこと。彼女とわたしだけのこと。






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彼女と私のこと (Hi-sensitivity) 春嵐 @aiot3110

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