彼女と私のこと (Hi-sensitivity)

春嵐

第1話

 派遣のアルバイトをしている。

 ばりばりのキャリアみたいなところに送られて、よく罵倒されたりもする。現代版のピエロ。ばかが一人混じると、組織は色々とあるらしい。

 お茶汲みとか机周りの掃除とか、そういう雑務が仕事になる。料理とかも普通にできるけど、お茶はなるべくちょっと薄めの美味しくないぎりぎり、掃除もほこりの残る感じのものを心がけた。責められることがこの仕事の本質だと、なんとなく。心理的に理解している。


 今回の派遣先は、特にえげつなかった。

 女性の社長が女性の社会参入を目的に作った会社で、メディア露出もたくさんしているらしい。あんまりそういうのを見ないので、自分にはよく分からなかった。

 中身は腐っていた。不倫、賄賂、公金横領。要するに、女性の社会参入とは特に関係なく、社会という仕組みに存在してはならない女の集まり。女の顔をした獣。そういう会社。


 そんなところにひとりだけ派遣されたから、風当たりは普通にひどいものだった。想定していた通りではある。とぼとぼと、給湯室に帰る。自分の机はないし、休憩もない。アルバイトというか、本当に、ピエロ扱い。まぁ、仕方がないので。されるがまま。


「大丈夫、ですか?」


 給湯室にひとが入ってくる。

 綺麗な顔の、女。

 ひとりだけ、なぜこの会社にいるのかが分からない女。他の女がこの会社にいる罪状は漏れ聞こえてくるものだけで大体把握していたけど、この女だけはそれを聞かない。それに、どろどろした社内の女のけなし合いに、この女が参画した気配もなかった。獣の巣になぜか咲いている、一輪の花。


「あの。手伝います」


 女。

 お茶に手を伸ばす。


「いえ」


 拒否したが、隣に並ばれた。

 こういうのが、いちばん、面倒。

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