時屋タソガレ〜その時、あなたは運命を買う〜

　狭い場所に、黄昏時に現れる時屋を舞台に描かれる物語。この店に迷い込んだ客は、二十四時間を現金で買うことが出来る。そのことによって、未来にも過去にも行くことが出来、自分の運命さえも変えることが出来る。
　一人目の客は、シングルマザーに育てられた少女。劣悪な環境下で育ち、母が離婚後も辛い人生を送っていた。そんな彼女は、時屋を訪れて過去に戻る。戻ったのは中学校時代。友達だった少女が外されているのを見ぬふりしていた。そんなある日、母親と離婚したはずの父親が家に来て——。
　二人目は束縛系彼女持ちの大学生。彼は夜中にホラー映画を見るくらい、恐怖に耐性があった。にもかかわらず、彼女から殺される夢を何度…続きを読む

人生に悩みを抱える人の前に現れる『時屋タソガレ』。
店を訪れた人物が買い取った『時』をどのように使うか、運命をどう変えていくのかを描く、短編連作です。

時を扱う店という魅力的な設定はもちろんのこと、一筋縄ではいかない不条理な展開が非常に秀逸です。
肌に触れるようなストレスや恐怖の感覚に、息が詰まるほどのリアリティを感じます。
最後にずどんと突き落とされる、不都合さが後を引く読後感が癖になる。
ダークなストーリーがお好きな方に全力でおすすめします！

文章はあっさりとしているのに、この作品の世界は濃厚です。
あまり詳しくはないのですが、いくつもの複線が、読み手の気持ちを揺さぶるかたちで置かれていて。

終盤に開くそれに対峙して、読み手はその花が何の花だったかを知ることになります。
それが陽の花か、陰の花か、それとも・・・・・・。

もっと多くの方にこの作品を、作者様を知ってほしいと思い、
つたないながら、感想文をお書きしました。

ご無理のない範囲での続編、楽しみにしています。