最終話 二人で世界を平和にしようね

 復興途中のアルテラ村からオレは旅立つことにした。


 魔族の策略で最弱の勇者としてこの世界に召喚されたけど、ルネットちゃんと左手を繋いでいれば勇者の力を使えると分かったんだ。


 だったら、オレはこの力を使ってこの世界の人たちを救いたい。この世界にいる七体の強大な魔族を倒して、みんなに平和をもたらしたい。


 パルパルに襲われたこの村の人たちみたいに傷つく人々を救いたいと考えた結論だ。後悔はしない、と思う。


「行こう。勇者様」

「う、うん」


 実はルネットちゃんも一緒に来てくれることになった。当たり前だけど、魔法使いのルネットちゃんがいないと、オレはただの役立たずだからな。


 勇者が元の世界に帰還するための召喚術式に落書きをした責任をとるつもりらしい。


 旅立ちの朝、オレたち二人は村の出口で村人から送られていた。


「ルネットみたいな娘を持って誇らしいよ。母さんも喜んでいるだろう」

「ありがとう。行ってくるね!」


 シラノさんにルネットちゃんが笑みを見せる。次にシラノさんはオレへと顔を向けた。


「フウキ様。勇者の召喚術式には、『他人のために命をかけて戦える気高い人物』という条件があります。その神の召喚術式に選ばれたご自分を信じてください」

「ええ。きっと、この世界に平和を取り戻します」


 オレとルネットちゃんは村人に手を振る。


 旅立ってから二人で森のなかを歩いていると、オレの周りを飛び回る小さな影があった。


「新ご主人様一号と新ご主人様二号ー! ポピーも連れて行ってください! デシ!」


 ピンク色の丸い鳥のような魔族、ポピーが辺りを飛びながら懇願してきた。


「うるさいな。お前は魔族だろ」

「旧ご主人様から助けてくれた恩義がありますから! ぜひともポピーも!」

「いいじゃない。勇者様。ポピーちゃんも一緒に行こうよ」

「さすが新ご主人様一号ー! デシ!」

「ていうか、オレが二号なのかよ」


 うるさく飛び回るポピーを振り払っていると、ルネットちゃんが微笑みかけてくる。


「これから二人で頑張ろうね、勇者様」

「その、勇者様っていうの止めてくれないかな」

「え?」

「オレの名前はフウキ・タムラ。勇者なんて大層なものじゃないし、フウキって呼んでよ」

「フウキ……」


 ルネットちゃんがその名前を口ずさむ。


「うん。よろしくね、フウキ」

「ああ。これからルネットちゃんも……」

「わたしのこともルネットでいいよ」


 向き合ったルネットちゃんがはにかんだ。


「ル、ルネット……」

「はぁーい!」


 笑って返事をするルネットと並び、オレは歩みを進めた。


「お二人とも、ポピーのことは、ポピーと呼んでいいですよ。デシ」

「お前は最初からポピーだろ」

「デシ……」

「ふふ。よろしく、ポピーちゃん」

「デシ!」


 そういうわけで、オレはルネットとポピーとともに遥かな旅を始めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最弱勇者と魔法使い少女が手を繋げば 小柄宗 @syukitada

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ