裕太の話3

平和な日常を過ごしていたある日、

僕と絵里の共通の友人の飯富紗枝から


「絵里が見ていられないくらい

 憔悴しっきているんだ。

 一度だけでいいから話を聞いてあげて?

 お願いします。」


と連絡が来たのだ。

最初は、断ったのだが

どうしてもと言うのと

まずは、僕の話を聞きたいと言われ

紗枝と会い、今までのことを話した。

その後に

紗枝も一緒にいるという条件で

仕方なく絵里の話を聞くことになった。




絵里の話を聞きに行く日になり

待ち合わせ場所に行くと

すでに紗枝が待っていて

紗枝のアパートで話すことになった。


その後すぐに紗枝のアパートに着き部屋に入ると

絵里が土下座をして謝ってきた。

突然のことで戸惑っていると

紗枝が


「まず話さないと」


と言って絵里に話しかけ絵里が顔を上げた。


一ヶ月でこんなに変わるのかと思うほどに

憔悴しきった顔をしていた。


テーブルを挟み席についてから

少しの沈黙の後に絵里が話し始めた。

最初は


「浮気をしていました。

 ごめんなさい。」


浮気のことの謝罪から始まり

ゆっくりと経緯について話し始めた。


相手は元彼だったらしい。

大学がたまたま一緒で

懐かしさから話すようになったと、

最初は、何とも思っていなかったが

話す事が増えていくと

付き合っていた頃のような気持ちになり

だんだんと惹かれていってしまったらしい。


元彼とは、

元彼の転校と共に別れたらしく、

きっと、未練みたいな気持ちが残っていて、

その未練が再熱してしまったんだと思う。


それでも絵里には、僕という彼氏がいた為

一線は越えないようにしていたらしいが

僕との予定がなかなか合わずに

会えない日が続いたタイミングで

元彼も含めた友達と遊ぶ機会があり

その帰りに、

元彼に家まで送ってもらうことがあって

そこでキスをされてしまったと言っていた。


最初は拒否しようと思ったが、

自然と受け入れてしまい

その日は、それで終わったらしい。


部屋に入り冷静になってから、

僕からのメッセージが入っていたことに気付き

罪悪感に苛まれて泣いてしまったが

このことを言える勇気もなく

連絡を返さずに一人で泣いていたらしい。


その後は、罪悪感が拭えないままだったが

罪悪感を隠すために僕に対してそっけなくしてしまい

連絡も取りづらくなってしまったと、

そして元彼の方は、

今まで以上に積極的に絵里との距離を縮めてきて

最終的には、雰囲気に流されてしまい

最後までしてしまったと言っていた。


それからは、

僕への罪悪感と背徳感で元彼を求めてしまった。

別れると連絡が入るまでおかしくなっていた。

別れると言われて焦り

新しい彼と言われて

知っていたんだと、

見られたんだと、

そこで初めて正気に戻ったらしい。


元彼をすぐに追い出し、

急いで僕に連絡を入れたと

でも、連絡しても繋がらなくて

急いで僕の部屋に行っても返事がなくて、

ずっと部屋の前で待ったけど

返事は返って来なかった。

諦めて自分の部屋に帰ってからも

焦りと不安からまったく眠れなくて

連絡が返ってきた時はすごく嬉しかった。

けど、もう私のことなんて何も思ってないんだって

でも僕とは絶対別れたくないから

なんとか謝らなきゃって思ったいたらしい。


「この一ヶ月、今までのことを思い出して

 大学に入ってからの私は最低だった。

 裕太はなにも悪くないし

 全部私が悪い・・・

 嫌われるのも当たり前、

 だけど、どうしても謝りたくて。」


少しの沈黙の後に絵里は、


「本当に好きなのは裕太で、

 元彼じゃない・・・

 でも、もう遅いって

 裕太の顔を見たらはっきりわかった。

 本当にごめんなさい。

 今まで本当に楽しかったです。

 今まで本当にありがとうございました。

 こんなこと言う資格はないけど

 幸せになってください。」


絵里は、最後にそう言って

座りながら深く頭を下げていた。


話し始めた最初の頃は


「テンプレみたいなことって言われるんだなぁ」


みたいなことを思っていたが

最後の頃は、

本当に反省してるようにみえたし

話を聞けてよかったとも思えた。


最後に僕から、


「話を聞いても

 絵里との関係を続けていくことはできない。

 正直、僕の中ではもう終わったことだから。

 でも今は、

 幸せにはなってほしいとは思っているよ。

 僕以外にも、いくらでも男はいるんだから

 次に出会った人とは、

 ちゃんと気持ちを伝えてあって

 間違えないようにしてね。

 今までありがとうございました。」


今思っていることを伝えた。


人によっては酷なように聞こえるかもしれないが

今の僕の本当の気持ちを伝えてから

紗枝にも今日のお礼を告げ帰ることにした。


正直、話を聞くまでは何とも思ってないし

何とも思わないと思っていた。


話を聞いてからは少なくても

次は、うまく行ってほしいし

幸せになってほしいとは、

思えるようになった。


話だけでも聞いてよかったとは

本当に思えたので

紗枝にも

正直に話してくれた絵里にも

最後にありがとうと伝える事が出来たのだ。





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