慎吾の話2
その日も絵里からの連絡はなく、
俺は、心配で眠れなった。
朝まで連絡を待ったのだが
やはり返事はなかったし
大学も休んでいた。
どうすればいいか考え
絵里と高校から一緒だった飯富紗枝にだけ
今までのことを話し一緒に絵里のところに
行ってもらう事にしたのだ。
紗枝とは、同じグループではなかったが、
絵里と仲が良かったのでたまに遊ぶことがあり
連絡先も知っていた。
紗枝は、俺に対してあり得ない、最低だと
すごく怒っていた。
怒られるのも当たり前だし
最低なことをしていたと
落ち着いて考えればよくわかる。
だが今は、
絵里のことが最優先だ。
紗枝に謝り、
絵里に連絡を入れてもらうと
紗枝には、連絡が返ってきた。
今の状況を聞いてもらうと
誰にも会いたくないと言っているらしい。
紗枝が話を聞かせてと言うと
大学が終わった後に
紗枝だけで話を聞きに行く事になった。
俺には会いたくないようだ。
ショックだったが仕方がない。
無事だっただけでも安心した。
紗枝には巻き込んでしまって申し訳ないが
頭を下げてお願いする事にした。
次の日、紗枝から連絡があり
大学に着いてから絵里の話を聞けた。
絵里自身がしてしまったことへの
後悔と罪悪感、
彼氏に別れようと言われたこと
彼氏に俺との関係を見られたこと
それから、
彼氏に謝りたくても連絡が取れないこと
彼氏が絵里に対して
完全に好意を失ってしまっている事実
耐えられなくて憔悴しきっていると言われた。
俺のしていたことの
本当の意味を初めて知った。
俺は、自分の気持ちを優先して
絵里を傷つけていただけだったんだ。
なんて馬鹿だったんだ。
絵里を幸せにできるのは俺で
今の彼氏じゃないなんて思っていたが
俺自身が幸せになりたかっただけだった。
絵里のことを真剣に考えるのであれば
ちゃんと別れるのを待つべきだった。
俺のしていたことは、
俺の自己満足でしかなかった。
絵里が苦しんでいるのは全て俺のせいだ。
どうしようもない喪失感。
絵里に対しての罪悪感。
大学に入ってからの行動全てに後悔した。
紗枝には
「絵里も最低だが
佐藤はもっと最低だ。
絵里に彼氏がいることを知っていて
よくそんなことができたね。
もし佐藤と付き合ってる彼女がいて
同じことしてくる男がいたらどう思うの。
頭を冷やして自分がしたことを
よく考えろ。
裕太にも土下座でもしてこい。」
そう言われた。
紗枝は絵里の彼氏のことも知っているから
さらに許せないのだろ。
だが、本当に紗枝の言う通りだ。
俺のしたことは、最低以外の何者でもない。
紗枝にお礼を告げ、
深々と頭を下げてその場を後にした。
一人になりよく考えた。
絵里の彼氏に謝りに行こう。
だが絵里の彼氏の名前しか知らなかった。
大学もどこかは聞いていない。
次の日
大学で紗枝に会い、
謝りに行きたいから
絵里の彼氏の
名前と大学を教えて欲しいと頼んだ。
紗枝は、最初は疑っていたが、
頭を深く下げて頼み込んで教えてもらえた。
顔もわかるようにと写真も見せてもらった。
その写真は、
絵里と彼氏が楽しそうに腕を組んで
ピースをしている写真だった。
胸が苦しくなった。
息ができなくなりそうだった。
俺は、
こんなに笑顔の二人を壊してしまったんだ。
現実を知るたびに自分がしたことの
重大さに気付かされる。
すぐに、絵里の彼氏のいる大学に向かった。
大学についてからは、
歩いている人に写真と名前を伝え探し始め
すぐに見つけることができた。
絵里の彼氏を見つけ急いで近くに行き
自己紹介をし事情を説明したいから
話をさせて欲しいと頼んだ。
絵里の彼氏は、困惑していたが
あまり興味もなさそうに頷き、
人目があまりない公園で話す事になった。
俺は、公園につきすぐに土下座をして頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんでした。」
絵里の彼氏は、驚き困惑しながら
俺を起き上がらせようとしたが
土下座をやめなかった。
すると、
「謝ったり土下座したりって自己満足ですよ?
僕がして欲しい訳ではないので
やめてくれませんか?」
本当に興味がないような態度で言われ
俺も頭を上げ話を始める事にした。
それから、今までのことを全て話
全て俺が悪いと言うこと、
そして、
絵里を許してあげて欲しいと伝えた。
だが、
もうなんとも思っていないし
終わったことだと言われてしまった。
ここで引き下がることもできずに
なんとか頼み込んだが
「今更ですよ。
僕の中では過去のことなんです。
あなたが悪いとか絵里が悪くないとか
正直どうでもいいんです。
事実、浮気したのは絵里なんですから
その事実が全てです。
ただ、お互いになにか足りなかった。
だからこうなった。ただそれだけです。」
そう言われてしまった。
本当にもう好意も何もないのかもしれない。
浮気相手の俺にも一切怒ることも
興味を示すこともない。
「結婚している訳ではないので
別れればそれで終わりです。
あなたも本当に反省しているのであれば
これからは、こんなことはせず
ちゃんとした順序で
お付き合いしたほうがいいですよ。
絵里とお幸せに。
それでは、失礼します。」
そのまま帰っていってしまった。
俺も呆然とその姿を見送るしかなかった。
俺は、一人歩きながら
いろんなことを考えていた。
考えても考えても答えは出ない。
でも一つだけわかっていることがある。
俺は、絵里のことが本気で好きだ。
この気持ちだけはかわらない。
今の関係はマイナスになってしまった。
でも諦めずに絵里に伝えよう。
その結果がダメでも、
絵里が幸せになるまで支えよう。
その相手が俺じゃなかったとしても
ちゃんと祝福できるように。
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