紗枝の話

私の名前は、飯富紗枝


裕太と絵里とは高校からの友達で

二人とも仲が良く、遊びにも一緒に行っていた。


大学は、絵里と一緒だったが

学部が違う為、

高校の時ほどは遊ぶことも少なくなっていた。

裕太とは、大学生になってから

ほぼ会うこともなく

絵里に会った時に、少し話しを聞くくらいだった。

最近は、

絵里も裕太にあまり会えていないという話だけは

聞いていたのだが、

突然、同じ大学で絵里たちのグループにいた

佐藤慎吾から

絵里に連絡をしたいから

話を聞いて欲しいと言われた。


絵里と同じグループにいるので

連絡は取れるんじゃないかと思ったが

真剣な様子だったので

話を聞くことにした。


私は、佐藤の話を聞いてから

怒りでどうにかなりそうだった。

許せない。

絵里がそんなことするとは思えないが

佐藤の話が本当なら最低だ。

絵里もあり得ないが、

佐藤のことはもっと許せない。


裕太が本当にいい奴だからこそ

裏切った二人を許せなかった。


でも、話を聞いた感じだと

裕太には、バレていると思った。

きっと絵里も裕太にバレて別れを告げられたから

落ち込んでいるんだとは思ったが

流石に自業自得である。


絵里に連絡を入れて少ししてから

返事が返ってきた。

佐藤には返事が返ってきていないらしく

ショックを受けている。

ざまぁない。


大学が終わった後に話を聞くことになったが

私一人で行くことになった。


今は、佐藤と会いたくないらしい。

私からも、佐藤にはキツく文句を言った。

正直まだまだ言い足りないが

他人がとやかく言うことでもないので

少しで我慢した。

本当はぶん殴ってやりたかったくらいだ。



大学が終わり絵里に連絡を入れてから

絵里のアパートに向かった。

空いているから入って来てと言われたので

部屋に入ると憔悴しきった絵里の姿があった。

あまりの姿に

一瞬どうしていいのかわからなかったが

そんな状態では、話を聞くどころではないので

無理やりシャワーを浴びさせ

少しでもちゃんと話を

出来るような状態にする必要があった。


シャワーを浴びて来た絵里は、

先程よりはマシになったが

まだまだ憔悴感が否めない。

とりあえず、

話せることから話してもらうことにした。


絵里はポツリポツリと話し始め、

大まかな内容は把握することが出来た。


私からしたら

佐藤にキスをされて

罪悪感と後悔から連絡を取りづらくなり

そこから逃げるように佐藤との関係を受け入れる。

意味がわからなかった。

だが、そう考えてしまう人もいるのかもしれない。

絵里がそうだったのだから。


その後も一ヶ月も会っていないとは呆れた。

そりゃ愛想も尽かされる。

裕太のことを何も考えていない。

絵里は自分の心を守るのに必死だったんだろう。


その後は、やはり思っていた通りで

裕太にバレて別れを告げられたらしい。

さらに、

絵里にはもう、

興味も好意も持っていないように感じたらしく、

ブロックまでされてしまったらしい。


昔から裕太は、割り切るのが早い、

普通の人が引き摺るようなことでも

あっという間に割り切って前を向いてしまう。

ポジティブというかなんというか

切り替えが異常に早いのだ。


今回も、もう割り切ってしまったから

絵里の事を過去のことと思っているのだろう。

正直、

少しだけ絵里には同情するが自業自得である。


絵里にしても、佐藤にしても

どっちもどっちだとは思ったが

一番の被害者は、裕太であり、

裕太は何も悪くないということだけが事実だ。

絵里も自分が全部悪いと言っていて

嫌われるのも仕方ないと言っていた。

でも、無関心な態度を取られている事だけが

耐えられないと言っている。



私からわかったようなことは言えないので

話を聞くだけ聞いて、

どうするべきかを一緒に考えられるように

話してみたが、裕太の性格的に、

もう話も聞いてくれないだろうと思った。

結局、解決策は見つからない。

時間が解決してくれるのを待つしかないのだ。


裕太に連絡をするべきか考えていると

絵里は、裕太にはこれ以上迷惑をかけられないから

何も言わないで欲しいと言われてしまった。


モヤモヤが残るが、当人同士がそれでいいなら

外野がとやかく言う資格はない。


その日は、流石に絵里が心配だったので

絵里の部屋に泊まった。

一応佐藤にも連絡は入れておいたが、

明日大学で話すことになった。


絵里も悪いが

佐藤は絵里に彼氏がいる事を知っていて

それでも手を出している。

正直どっちも許し難いが

佐藤の事はもっと許せなかった。


次の日も絵里は、

大学を休むと言っていたが

来週からはちゃんと行くと言わせて

私は大学に向かった。



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