紗枝の話2

大学に着いてからすぐに佐藤が来たので、

昨日の話をかい摘んで話した。

だが、佐藤のことがどうしても許せなかったので

裕太に土下座でもしてこいと言って

その場を後にした。


その日も絵里に連絡を入れたが、

憔悴感は拭えない。

話も聞いたが解決策は今の所ない。

絵里に関しては、

様子を見るしかできなかった。


次の日、佐藤からまた連絡が来た。

本当に裕太に謝りに行くらしく、

裕太の事を教えて欲しいと言われた。

最初は疑っていたが、

真剣な顔付きで話していたので

仕方なく教えることにした。

顔もわからないといけないと思い、

わざと、絵里と裕太が腕を組んで

楽しそうにしている写真を送っておいた。

これくらいの嫌がらせくらいはいいだろう。



そのあと佐藤から、また連絡があり

本当に謝りに行ったと聞かされた。

しかし全く相手にもされず、

怒られることも殴られることもなかったらしい。

それどころか

全く興味もないといった感じだったらしく

意気消沈の様子だった。

ざまぁみろとも思ったが

殴られたり怒られた方が

スッキリ出来たのかもしれない。

無関心ほど辛いものはないのかもしれないと

私はこの時、そう思っていた。



それから絵里も大学には来るようになったが

心ここにあらずといった感じらしい。

絵里とは連絡を取り合いなるべく

悪い方に行かないように

監視をしているような状態だ。


佐藤は、本気で絵里の事が好きなんだろうと

思えるほど絵里を支えることに徹していた。

最初からそうしていれば

違った結果になったんじゃないかと思ってしまうがもう過ぎてしまったことだ。

私からはこれ以上、何も言うまい。


だが、流石に1ヶ月過ぎても変わらない

そんな調子の絵里を

いつまでも放って置く訳にもいかない。

お節介だとは思うが裕太に連絡させてもらった。


裕太に会い、話を聞くと

やはり完全に割り切っていて

すでに絵里の事は、

なんとも思っていないようだ。


絵里と会えなくなってから

不安で色々考え、疑心暗鬼になり

それを確かめるために会いに行き

その現場を見てしまったと、

そしてその反動からか

一気に気持ちが醒めてしまったらしい。

今は、完全に無関心である。


完全に絵里の自業自得だが、

もし私が絵里と同じ立場でも

正直、立ち直れないかもしれない。

そう思うほどに無関心だった。


だが、

絵里にも過去から決別するチャンスは必要だ。

謝って先に進めるならそれに越した事はない。

裕太には、迷惑をかけてしまうが

話を聞いて欲しいと頼み

私も一緒であればいいと言う事で

なんとか話せる機会を作りことができた。


急いでそのことを絵里に伝えた。

話を出来る事はありがたいが

巻き込んでしまっている事を

悪いと思っているらしい。

そこは、はっきりと言わせてもらった。


「最初から巻き込まれてるし今更だよ。

 正直いつまでもそんな顔されてる方が

 嫌に決まってるでしょ!

 話をして謝ってしっかり割り切れるなら

 それに越した事はないでしょ?

 だからちゃんと割り切れるように

 話してきなさい!」


絵里は申し訳なさそうにしながらも

ようやく前を向き始めた。



絵里の家だと裕太は嫌かもしれないと思い

私の家で話す事になった。

絵里には私の家で待っていてもらい

裕太を迎えに行った。



裕太が私の家に着いてすぐ

絵里は土下座を始め謝り続けた。

話にならないので

土下座をやめさせ話し始めてからは、

私は一切話さずに只々話を聞いていた。


正直、絵里には悪いが、

テンプレ的な事って本当に言うんだと思っていた。

同情もできないしやっぱり自業自得だ。


でもちゃんと謝る事が出来た絵里は、

どこかスッキリした顔付きになり、

始めは完全に無関心だった裕太も

どこか絵里に対しての感情が

少しだけ戻ったように見えた。


この二人が会う事は、

もうないかもしれないと思うと

仲が良かった事を知っている

私からするとなんとも複雑な気持ちだ。

それでも、

二人で話、二人で決めた事。

当事者でもない私が口を挟む事はできない。



絵里もようやくこれで

前に進む事ができるとは思う。

私のお節介にここまでだ。

これからは、

少しずつ、いつも通りに戻っていくだろう。

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