割り切ってしまう男、割り切れなかった男、流された女、失ってから気付く物とは?

ya_ne

裕太の話

僕の名前は近藤裕太。

今日は高校の入学式だ。


高校の入学式の後

自分のクラスに向かい自分の席に座り

前の方の席にいた女子を初めて見た時は、


「可愛い子だなぁ」


くらいの気持ちで特になにも思ってなかったのだが、

席替えでその子と

席が隣になった事をきっかけに仲良くなった。


彼女の名前は、新田絵里


彼女の笑顔や明るい性格に、

だんだんと惹かれていった。


そこからは、あっという間に

好きという気持ちに変わっていた。


僕は、初めての恋に戸惑いながらも

彼女と話すのがどんどん楽しみになり

毎日学校に行くのが待ち遠しくなっていた。


だが、また席替えの時期が来た。

彼女と席が離れてしまうかもしれない、

思い切って告白することにしたのだ。



告白する時は、

心臓が飛び出るかと思うほど緊張したが


「好きです!僕と付き合ってください。」


何とか告白する事ができた。

緊張しながら返事を待っていると彼女は、


「私も好きです。よろしくお願いします!」


なんと告白は成功したのだ。


飛び上がるほどに喜んでしまったが

絵里も顔を真っ赤にして

恥ずかしそうにしながら

喜んでくれていた。


僕にとっては、初めて彼女できたのだ。



付き合いだしてからは、

毎日がもっと楽しくなり

順調に交際が続いていった。


初めてデートをし、

初めて絵里と手を繋ぎ、

初めてハグをし、

初めてキスをした。

そして、

初めて最後までする事ができた。


僕にとっての初めては、

ほとんど絵里とだった。


絵里は違ったみたいだけど。


中学の時に付き合っていた人と

全て経験済みだった。


ショックではあったけど、

今付き合っているのは僕だから

そんなことは、気にしない。

そう自分に言い聞かせていた。

過去は変えられないし仕方がないのだ。


その話をしていた時の

絵里の辛そうな表情を見たら

僕が何かを言う必要もなく

これから二人で、

思い出を上書きしていけばいいと思えた。



そのまま時は流れ、高校最後の年となった。


受験を控えた僕たちは、

お互い会える日を決めて

勉強に集中しようと言う話になり

絵里とは、学校以外では会う事が少なくなった。


お互いに決めた事なので我慢して

その分、勉強に集中することにした。


勉強に集中できたおかげで

お互い志望校に合格する事ができた。

二人とも地元を離れることになり

大学も別々だったので不安だったが

同じ都内の大学で

一人暮らしで住む場所は、

割と近かったのでそこは安心だった。


大学に入ってからも交際は続き

お互いのアパートに行ききして

順調にこの関係が続くと思っていた。


大学にも慣れ始め頃、

講義やサークル、バイトなどで忙しくなり

徐々に、絵里と会えない日が増えていった。


それでも僕は、

絵里への連絡だけは、毎日必ずしていたのだが、

返信がすぐに返ってこなかったり

電話も繋がらない日が増えていった。

返信が次の日になることもあった。

電話が繋がり話していても

そっけなく感じてしまう。

会いたいと連絡しても

忙しいといつも断られてしまう。


最初の頃は、しかたいないと思っていたが

さすがに一ヶ月以上会えていないと

僕でも疑心暗鬼にもなる。

毎日絵里のことを考え、悩み、

悶々とする日々を送っていたのだ。


絵里に連絡を入れても

やはり返信がないので

意を決して絵里のアパートに

直接行くことにした。


僕のアパートから

絵里のアパートに着き

絵里の部屋の玄関の前で僕は確信した。



絵里は浮気をしている。



なんとなくは気付いていたし

「やっぱりな」

という気持ちだった。


絵里のアパートの部屋の中からは、

絵里の他に男の声がした。


楽しそうに笑い合っている声が聞こえ

そして静かになった。

耳を澄まして聞いていると

絵里の喘ぎ声が聞こえ始めた。


きっとそういう事が始まったのだろう。


一気に気持ちが醒めていく。


僕は、何もせずにそのまま

自分のアパートに帰った。


アパートに着いて部屋に入ってからも

冷静だったし

今のことを考えても

何とも思わなくなっていたが、


「これが寝取られってやつか」


なんて事を思っていた。


まさか自分がされるとは思ってもみなかった。

少しショックだったが

復讐したいだとかは思わなかった。

絵里のことに悩み、考えて

悶々としていた日々の反動から

一瞬で絵里への気持ちが醒めてしまったのだ。


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