最終話

紗枝には

今回巻き込まれる形で、

間に挟まれ、感じた事があった。


第三者目線で見ると裕太は悪くはないんだと思う。

気持ちのすれ違いとかはあったかもしれないが

絵里と佐藤が完全に悪いと思う。

そこは間違いないはず。


女の私からすれば男に迫られて断ったとしても

襲われたりしたら力では勝てないので

どうしても佐藤が悪く見えてしまう。

他の人から見たら簡単に流されてしまう絵里の方が悪く見えるのかもしれない。

いろんな考え方があるから

答えはきっと出ないんだとは思うけど。


それでも、

絵里に関しても、佐藤に関しても

そんなに後悔するなら


「最初からしなければいいのに」


と思ってしまう。

そんなに相手が大切であれば、

相手の立場に立って考え行動すれば

簡単にわかることなのだ。

自分がされて嫌な事はしない。

子供でもわかる事だと思う。


自分たちがしたことを、

全く同じことをもし相手にされたら

自分がどう思うのか、

想像して考えるだけでも

違った答えになったはずだ。


裕太のこともいくら反動とはいえ、


「ここまで無関心になれるのか?」


とは思ったが、

信頼していた人に裏切られるという事は

それだけ心が壊れてしまう事なのかもしれない。


ひと時の感情に流され後悔することがある。

その後悔がダメとは言わない。

その後悔を活かして

次にまた同じことをしなければいいのだから。


でも、今回のように大切な人を傷つけて

失ってから初めて気付くとよく聞くが、

そんなに大切な人なら失わない努力をするべきだ。

失ってからでは遅いのだから。


割れたコップは、

いくら直しても亀裂が入ったままなのだ。

綺麗に直したつもりでも、

ちょっとした事でまた壊れてしまう。

元通りにはならないのだ。

それでも、歪な形でもいいなら

それはそれでいいのだとは思うが

私だったら耐えられないかもしれない。


だからこそ、

そんな状態にならないように、

失わないように、

関係が壊れないように、

その努力が必要なのだ。


楽な方に傾くのは簡単だし逃げたくもなる。

でも、その決断を間違うと

取り返しがつかなくなることもある。


裕太のように、無関心になる人の方が少ない。

もしかしたら復讐なんて考える人もいる。

復讐されて一生背負っていかなければならない

傷を負うこともある。

今回はそうならなくて本当に良かった。

そこは運が良かったんだろう。


絵里も佐藤も

裕太に謝ることだって自己満足だ。

本当は、許してもらって

自分の気持ちを楽にしたいだけかもしれない。

相手も望んでもいないかもしれない。


だけど、前に進む為に、

何かしなければいけないんだとは思った。

謝ることが前に進むきっかけになるなら

どんどん謝った方がいい。

一度の失敗で人生が終わる訳ではないし

私たちはまだまだ若い。

これからもっともっと

大変なことが待っているかもしれない。

いつまでも止まっていても仕方がないのだ。

自分達がした事を次に活かして

同じことを繰り返さないように

それが一番大切なんだと思った。


正解なんて誰にもわからないんだから

結局は、やるかやらないか。

やって成功することもあれば

やって失敗することもある。

その逆に

やらないで良かったと思うこともある

やれば良かったと思うこともある。

だからこそ、

その決断を人に流されずに自分の意志で

しっかり考えていかないといけない。

でも、重く考えすぎずに

それぞれが幸せになる方法を模索しながら

成長していければいいのかな。



紗枝は、

今回の事を反面教師だと思い、

これからの人生に

しっかり役立てようと思ったのだ。




その後は、

大学も別々なので

絵里をほとんど見かけることもなかったが

元彼と一緒にいるところを見かけた時があった。

そのまま付き合い始めたのかなとも思った。



紗枝からはたまに連絡を取り合っていたが

それも最初のうちだけで

紗枝に彼氏が出来てからは、

ほとんど疎遠になってしまった。





月日は流れ、大学も卒業し社会人になった。

僕は、会社に入ってから知り合った女性と

お付き合いをしている。

彼女にプロポーズもし、結婚することも決まった。

仕事もプライベートも

とても幸せな充実した日々を送っている。



ある日、会社の同期と飲んでから帰っている途中で

たまたま絵里を見かけた。

明らかに年上の既婚者であろう男性と歩いて

ホテル街へと消えていった。

勝手の憶測かもしれないがきっと不倫だろう。

どうでもいいがまた流されてしまったのかな。



後日、結婚式の打ち合わせに向かっている途中で

また絵里を見かけた。

とても幸せそうに元彼と手を繋ぎ歩いていた。

まだ付き合っていたんだと驚いたが

元彼くんは何も知らないのかな?

知らない方が幸せなこともある。


人間そう簡単に変われないということかな。

一度やってしまったことはまた繰り返す。

精神力が相当強くないとダメなんだろう。

それでも、

絵里が見つけた幸せが今の形なら

それはそれでいいとは思うが

僕には理解ができない。

絵里は、どこか感覚がズレてしまったんだろう。

僕にとってはどうでもいいし興味もないことだ。

元彼くんには少し同情する。

だが、因果応報とはよく言ったものだ。





僕の隣を歩く

今後、僕の妻となる彼女の顔を見て

今度こそ一緒に幸せを見つけていこうと思った。


僕は彼女に手を差し出した。

隣を歩く彼女も嬉しそうな優しい笑みを浮かべ

僕の手を取り二人で手を繋ぎ歩いたのだ。

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割り切ってしまう男、割り切れなかった男、流された女、失ってから気付く物とは? ya_ne @ya_ne

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