慎吾の話

俺の名前は、佐藤慎吾。


俺には、好きな人がいる。

中学時代に付き合っていた元カノの

新田絵里のことが

いまだに忘れられない。


中学3年になるタイミングで

俺は、転校することになり、

絵里と話し合って、

遠距離では無理だろうと

別れてしまったのだ。


そのことを後悔している。

離れてからもずっと忘れられない。

高校に入学してからも忘れられず

ずっと引きずっていた。


いつまでも引きずっていても

仕方がないと思い

彼女を作ったこともあったが

やはり、うまくいかない。

絵里と比べてしまうのだ。


そんな気持ちのまま

大学受験が始まり

なんとか、志望校に合格することができた。

大学に入れば新しい出会いもあるし

気持ちも切り替えられるだろうと思っていた。



その期待は、

別な意味で叶うことになった。

絵里が同じ大学だったのだ。


俺は、運命だと思った。

普段はそんなこと信じはしないが

大学で再開できるなんて、

マンガみたいだと興奮した。


すぐに声を掛けた。

付き合っていた頃と変わらない

明るい絵里のままだった。

外見もさらに磨きが掛かっていた。


最初は、懐かしむように話していたが

高校の話をしている時に

俺は、ショックを受けることになった。


絵里には、

高校一年の時から付き合っている彼氏がいて

同じ都内の別な大学に通っていると聞かされた。


俺は、一気に運命を呪った。

だが、絵里に彼氏がいない方がおかしい。

仕方がないことなのだ。

それでも、

大学で、絵里を見かけるたび

目で追ってしまうし、見惚れてしまう。

絵里と話をするたび

心躍ってしまう。

絵里が、彼氏の話をするたびに

胸が締め付けられてしまう。


それから、絵里を含めた友達グループができ、

いつも一緒にいるようになった。

嬉しい反面、複雑ではあった。


大学にも慣れ始め

バイトやサークルも忙しくなり

それ以外の時間は、ほとんど

グループのみんなで過ごしていた。


絵里は、グループの女友達に

彼氏となかなか会えていないと言っていた。

お互いに時間が合わない日が多いらしい。

俺には彼氏の話は一切してこない。

一応、元彼だし

気を遣っているんだと思う。

盗み聞きのようにいつも聞いてしまう。

俺としてはなんとも言えない気持ちだった。


俺が元彼ということは、

みんなには話していない。

気を遣われてしまうと

絵里との今の関係が崩れてしまうのが

怖かったからだ。


俺は、今でも絵里が好きだし、

少しでも近くにいたい。

彼氏に戻れなくても

友達という関係でもよかったんだ。

絵里も、

俺と今の関係を望んでいるように思えた。

決して二人きりには、

ならないようにしていたのだ。



そんなある日、みんなで遊んでから

絵里を送って行く事になった。

俺は、

久しぶりに二人きりになれることに

気持ちを抑えることができなかった。

付き合っていた頃の話をして呼び方も変えた。

絵里のアパートにの前で我慢しきれずに

キスをしてしまったのだ。


絵里は、一瞬驚いていたが

そのまま受け入れてくれた。

だが、絵里には彼氏がいるのに

俺は、なんてことをしてしまったんだろうと

すぐに正気に戻った。


「ごめん」


焦った俺は、そう言って急いで帰った。


帰ってからも、絵里に申し訳なくて

絵里の彼氏にも申し訳なくて

罪悪感に苛まれた。


次の日、

絵里に会った時は、

ぎこちなくなってしまったが

絵里の変わらない態度に安心した反面

俺の中で気持ちが抑えられなくなっていった。


結局、絵里には彼氏がいるからと

自分に言い聞かせて気持ちを割り切っていた事に

歯止めが効かなくなり

自分の気持ちを割り切れなくなってしまった。


それから、

絵里に対して積極的にアピールするようになった。

それが実ったのか絵里は、

だんだんと付き合っていた頃のように

接してくれるようなった。


そして、

二人きりに遊びに誘い

そのまま絵里を抱いた。


彼氏には悪いと思ったが、

気持ちを抑えられない。

順序は違ってしまったが、

今の彼氏と別れて

俺を選んでくれると思った。


だから俺はそう伝えた。

だが絵里は、首を縦に降らなかった。


それでも、俺はチャンスを待った。

その後も何度か絵里と体を重ね

その度に俺と付き合って欲しいと伝えた。


絵里が首を縦に振ることはなかった。


そして、

初めて絵里の部屋に呼んでもらった。

その日の絵里は、

いつもと違って激しく俺を求めた。

何時間か経ってから

よくやく落ち着いた。

その後すぐに絵里は、

携帯を見て固まっていた。

顔が青ざめているように見えて

声を掛けた。

だが、反応がない

もう一度声を掛けると

すぐに帰って欲しいと言われた。

意味がわからないから

説明してくれと聞くと


「彼氏にバレたかもしれない。」


俺もさすがに血の気が引いた。

絵里の彼氏には、悪いとは思っているし

今の絵里との関係が浮気だということも

十分理解している。

だが、俺は絵里のことが本気で好きだ。

彼氏のところに一緒に行って話がしたいと

絵里に伝えたが、

今日はどうしても帰ってと頼まれ

渋々帰る事にしたのだ。



帰ってからも絵里のことが気になってしまい

なんども連絡をしたが一向に返事はこなかった。

きっと彼氏と、

話し合いでもしているんだろうと思っていた。


次の日も朝から連絡を入れたが、

返事が来ない。

大学に行けば会えると思ったが

絵里は、大学も休んでいたので

講義が終わった後に、

絵里のところに行ってみた。


絵里の部屋は、電気もついておらず

いるのかいないのかもわからなかった。

連絡も一向に帰ってこないので

グループの友達にも聞いてみたが

みんな連絡がないと言っていた。


さすがに不安になったが、

今は、

事情を話すタイミングではなかったので

次の日まで、様子を見る事にしたのだ。


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