第10話



「アハハッ!」


 笑いが止まらない。魔術を使えないからとセツナを馬鹿にしていた奴らが、セツナほど体力もなければ魔術すら使っていないボクに手も足も出ないなんて。


「君達もさ、もっと楽しそうにしなよ!」

「ガハッ」


 もはやトロウペントすら握らず、素手で相手の顔面を殴り続ける。


「魔術師が、なんで、こんな……」

「知りたいかい?」


 目の前に転がる1人の襟を掴んで吊り上げる。


「ボクには剣の才能が無かったからね、極めることは叶わなかった。で、ボクは何に目をつけたと思う?魔術とかいうくだらない答えは無しだよ」

「………体術、か」

「正解」


 玲月一刀流の歩法、体さばきに目をつけ、そこに騎士が武器を失った際の最後の手段として使う徒手での近接格闘術を取り入れ、アレンジした。


 我流ゆえに動きを読まれづらい。魔術ほどの破壊力はないがそれでもたかが人間程度の肉体を破壊するのには十分だ。


「っ」


 閃光が放たれる。光矢だ。


「トロウペント!」


 その声に呼応するかの様に、地面に突き刺さっていた杖は歪な軌跡を描いて飛来し、主の目の前で静止すると高速で回転し光矢を弾き返す。


「へぇ、ボクとこっちでも勝負したいんだ」


 トロウペントを右手に取り、クルリと回して地面に突き立てる。


「さっきのでボクがアレンジするのが好きだってわかってもらえたと思うけど、魔術もアレンジしてるんだよね」


 絶句するクラスメイトに少女は鼻で笑う。


「白き風よ、地をかけ、来たる吹雪の知らせを告げろ」


 足元を冷たい風が吹き抜ける。直後白い風が吹き荒れる。


「ダメージが無いからって油断しちゃダメだよ」


 吹雪は闘技場全体を包み込み、凍てつかせる。


「やめ!!!」

「…………」


 結界が解除され、発動した魔術が強制的に中断される。せっかく面白いことが起きるところだったのに。


「さて。ボクの勝ちみたいだけど、何をしてもらおうかな?」













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る