第2話





 俺達がちょうど15歳の時、事件は起きた。


「父さん、父さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」


 俺達の憧れの死。しかもそれは怪物との戦いによる名誉の死ではなく人間による謀殺だった。王宮に叛逆を企てていたという濡れ衣をきせられた上で。


 優しかった母は愛する夫を失ったショックと度重なる尋問で完全に精神を病んでしまった。今では言葉を交わすことすら叶わない。


 俺に残ったのは両親が俺の学園卒業の為に用意してくれていた一本の刀【月夜つくよ】と父親譲りの剣術、未だ俺を気遣ってくれる幼馴染のシグだけだった。


「セツナ………」

「じゃあな、シグ」


 そして俺はその幼馴染みすら手放そうとしている。父の嫌疑はまだ晴れていない。大罪人の息子とつるむ人間など格好の標的になる。


 そんな奴が近くにいては危険だ。こいつにはこいつの将来がある、そんな無責任な事は出来ない。


「セツナ、もう少しだけ考え直してよ……2人で……頑張ろうよ、また……」

「………」

「ね、ねぇ!私の家に来るのはどう?……お父さんもお母さんもきっと歓迎するよ?だから……」

「…………」

「何処にも、行かないでよ……私を1人にしないでよっ!」


 泣きながら必死に懇願するシグに背を向ける。


「また何処かで会おうな」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「っ…………」


 奥歯を噛み締め、俺は学園から、王都から去る事にした。





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