第9話




 学園にはより実戦的な経験を積むために"非殺傷結界"という特殊な結界が貼られた闘技場がある。


 この結界内でならどんなに強力な魔術も、急所への物理的な攻撃も全てのダメージが無効化される。そのためこの結界内での学生同士で決闘することも少なく無い。


 しかし、無効化するのはダメージのみ。攻撃を受けたことによるショックや死への恐怖は免れない。


「今更謝っても遅いから」

「それはこっちのセリフだ、クソアマ。無様に命乞いなんかすんなよ?」

「上等」


 試合開始の合図と共に相手が突っ込んでくる。


「(正面。舐められたものだね)」


 クルリと横に避け、流れのままトロウペントでその横っ面を殴りつける。トロウペントは特注で用意したボク専用のスタッフ。両側の端から中央7:3の位置にそれぞれ握り拳一つ分の長さのグリップがついたそれは、使い方次第では局所に衝撃を与える鈍器となる。


「っ、クソッ……!」


 頭部への痛みに顔を歪めながら、無我夢中に剣を振り回す。


「隙だらけだね」

「お前がな!」


 2人目が背中から襲いかかる。


「(得物は大剣か。それなら)」


 ボクの蹴りの方が速い。


「ぐふぉっ!?」


 下から掬い上げる様に顎を蹴り上げる。


 その勢いのまま宙に浮き、トロウペントで地面を突いてさらに高く飛ぶ。


 そして上空から戦場を見渡す。狙いはこちらに狙いを定めている狙撃手、弓使い。


「そこ!」


 右手に持ったトロウペントを全力で投擲する。放たれたトロウペントはただ真っ直ぐに飛び、ほぼ同時に放たれた矢を弾き飛ばしながら弓使いの土手っ腹を穿つ。


「さぁ、次は誰?」




 

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