物語の結末はキャラが自分でつかみ取っていくもの!!

創作をする側の人間の中には、書いていて「キャラが勝手に動いた」と思う瞬間がある、という話をご存じでしょうか。

本作の主人公はレイシェルという名の青年なのですが、彼は前世では漫画のシナリオを作るプロでした。彼が作った漫画作品はアニメ化もするほど大人気でした。なのに、本人は作品が未完成のまま夭折。気がついたら、自分が手掛けた作品の世界に転生しています。
自分で作った物語なのだから、展開は手に取るようにわかっている。お気に入りのキャラが悪役令嬢として破滅する設定になっているので、”こちら”の世界ではなんとかハッピーエンドにしてあげよう! と奮闘するのですが――

この世界ではキャラは生きています。原作者であるレイシェルの手を離れて、物語はあらぬ方向に進んでいきます。裏でいろいろな陰謀が張り巡らされている結果でもあるのですが、ヒロインのアリエステはそんなことには負けない。そして、レイシェルも。原作にはないシナリオ、でも本編に盛りたかった設定、自分が作ったキャラへの思い入れ――クリエイターとしてのいろんな思いを抱えながらも、最後はすべて綺麗に昇華する。そんな姿に共感し、感動しました。

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