田畑や野山と縁遠くなってしまった日本人にも、きっと八百万の神の宿る原風景は血脈の中にあるはず。そこから生まれる尊び恐れ敬う心を失くした時に日本人は日本人でなくなるんだと思います。その思いを呼び覚ます縁となる美しい物語です。
春になり芽吹く桜に山より来る稲の神。山の神が稲の神となって里に降りて来て、収穫を迎えて再び山の神となる。日本に元々根付いている信仰の形を、情緒的な文章で記された美しいお話です。巡る命についての結末は、寂しさもあり未来に向かう希望もあり。読後の爽やかさはひとしおです。
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