桜には神が宿り田植えの時季には山から田神が降りてこられるのをお迎えする人々はそうとは知らず神々と暮らし神々は身を削って豊穣をもたらすとても壮大で荘厳な景色を鮮やかな言葉で紡がれたとある地方の昔語り
里に佇む、桜の老木。老木はいつも、春になるとやってくる豊穣の神様を迎える。物語の中で、里山の美しい情景とともに描かれる人々の暮らし。懐かしい日本の風景に、心がじんわりと温かくなります。命には限りはあるけれど、新しい命に受け継がれていくものがある。穏やかな語りで綴られる、趣深い生命の物語です。
田畑や野山と縁遠くなってしまった日本人にも、きっと八百万の神の宿る原風景は血脈の中にあるはず。そこから生まれる尊び恐れ敬う心を失くした時に日本人は日本人でなくなるんだと思います。その思いを呼び覚ます縁となる美しい物語です。
春になり芽吹く桜に山より来る稲の神。山の神が稲の神となって里に降りて来て、収穫を迎えて再び山の神となる。日本に元々根付いている信仰の形を、情緒的な文章で記された美しいお話です。巡る命についての結末は、寂しさもあり未来に向かう希望もあり。読後の爽やかさはひとしおです。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(196文字)
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