斯くしてダークエンジェルは戀に墜ちた

破壊者と呼ばれるイレギュラーの存在は、輪廻の渦中で何者へと変貌するのか?

想像を超える劇的な展開に驚き、圧倒される魅惑のファンタジーです。

舞台となる世界は境界で三種に区切られます。
①魔世界=デーモニア
②死世界=タナトピア
③人間界=オートピア
これら三界を見守る上位の存在が、管理者と呼ばれます。

☆☆☆
ある時、管理者はデーモニアで謎の個体を感知しました。それが本作の主人公、デルグレーネです。見掛けは可憐な少女。しかし、世界に混乱を招きかねない程の際立った能力を誇る魔物です。
排除命令が下され、死を宣告されますが、時空の「裂け目」に墜ちて一難を逃れます。それでも、五感を喪失し、活動限界を迎える……

幸運か、奇跡か、或いは創造主の悪戯か──彼女は自身の運命を変えるエリアに導かれます。能力の大半を失い、幼く無力になった「魔物」。そんな彼女を優しく介抱する人々が居ました。

牧歌的な田園。傷が癒えれば直ぐにも立ち去るような、止まり木のような場所です。正体は恐るべき魔物……彼女は戸惑いながらも、不憫な少女として迎えられ、また自身も変わって行きます。

禍々しい存在だった少女が恋を知り、慈しむことを知り、愛する心を宿します。その過程が華麗な筆致で丹念に描かれ、本作の真髄とも申せましょう。

優しく、狂おしく、切ない。

そこで観測する管理者たちは、この決定的な異分子をどう扱うのか?

中盤から結末に掛けて一気に引き込まれる展開が待っています。

☆☆☆
少々、種明かしが過ぎましたが、多くの読者、過去に類例のないファンタジーをお求めの諸氏に是非、繙いて頂きたい。

少女デルグレーネは決して貴方を裏切りません。そして物語は終幕に、盛大な喝采を捧げたい程に、読者を見事に裏切ってくれるのです。

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