生贄のいいわけ
冬野瞠
洞穴の奥で
ひいっ、という鋭い悲鳴が、私と
私が
洞窟内で頼りない
「人の子よ。神にいいわけを述べる事を許す」
私はなるたけ厳めしい声を作り、腰を抜かしている贄の男に言い放つ。
「お……俺は確かに、女房殺しをしでかしちまった男だ。しかし相手にも非がある! 子供ができたからってそっちにかかりきり、飯炊きもしない、俺が
聞くに
突然主が男に
今回も駄目だったな、と私は冷静に振り返る。
いいわけをしろ、とは命乞いをしろという意味ではない。いいわけとは必ずしも言い訳ではなく、別の解釈もある。良い訳を述べろ――つまり、自身が贄として適している理由を述べよ、という解釈だ。
私はこの言葉を幾人もの人間にぶつけてきた。良い訳をきちんと説明できる者が現れれば、
しかし、この調子だと主は向こう何百年も
まだ人間を貪っている祟り神を見て微笑する。私は主のこの冒涜的な姿を愛している。だから未来永劫、いいわけのふたつの意味に気づく人間など現れなくていい。私はそう思うのだ。
生贄のいいわけ 冬野瞠 @HARU_fuyuno
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