清純ユニコーンと初物黒竜が行く救国ファンタジー!

疫病に苦しむシデ村を救うために、テンガン領極東地方・トルジカの魔女を訪ねたイズモは、紙袋の目出し帽を被った(自称)美少女と出会います。
その(自称)美少女は、トルジカの魔女スークスの一番弟子・ユニファ。
領主の息子であるイズモは、なんとかしてシデ村を救うために、薬を所望しますが、ユニファは売ってくれません。

それもそのはず。
黒竜テンガンが治めるデンガン領は、異種族間による百年戦争から身を護るために、弱小魔族が寄り集まった場所だったのです。
弱者のコミュニティは、見ず知らずの者に手を差し伸べる余力はなく、自分たちの生活だけで精一杯。
そういう意味で言うと、イズモは世間知らずのお坊ちゃんかもしれません。

しかし、領主の息子だからこそ、領民を守ることへの責任感は人一倍強く、その純真な心はユニファの心をくすぐります。
結局、条件付きでユニファは妥協するのですが、その後とある出来事をきっかけにして、ユニファはイズモと行動を共にすることになります。

すべてはシデ村を――、ひいては領民を救うために。

そんなピュアなイズモですが、ピュアなのはユニファも同じ。
現実を直視したリアリストな一面を持ちながらも、根っからの善人であり、優しく、健気なユニファ。

設定やストーリー自体は割と重めなのですが、イズモとユニファの純粋さや、コメディちっくな掛け合いのお陰で、鬱々しい展開にはならず、楽しく読むことができます。
特に、初物イズモと純粋ユニファの組み合わせは、非常に微笑ましく、口から砂糖がざーっと出そうになります。

個人的には、13話の二人のやり取りが好きです。
凄惨な過去を持つユニファだからこそ、純粋に相手を思いやれるイズモに気を許すことができる。
そう考えると、二人の出会いが良きものであったと、しみじみと思わせてくれます。

決して、生やさしい世界ではないこのテンガン領で、二人の旅路はどのような結末を迎え、二人の関係はどうなるのか?
是非、にやにやしながらお読みください。

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