断面と断片

 それが起きた時。

 私はアルバイトの時間が終わり、少し遅い昼食をとろうと考えていたところだった。久しぶりにレストランに行って、少し高い食事を自分に振舞おうと考えていたところだった。

 そのとき、すぐ近くにあった防災無線のスピーカーが津波警報を発した。

 最初は、何かの抜き打ち訓練だろうと思って全く気に留めていなかった。

 目当てのレストランに入り、注文した料理が来るまでの間スマホを出した。暇つぶしにネットニュースを読もうとして、防災無線は事実を呼びかけていたのだと初めて知った。

 私は西日本の人間であり、あの大災害には実質的に無関係でいられた。もっとも、県レベルで見るのであれば津波で財産の何割かを傷つけられた人々はいた。

 さておき、自分の分身とも認識していた 書籍がかくも無残な状態になり果て、さらに生き延びるという情け容赦のない現実の前に無力感を晒される……それは本作の作者にとって二重の打撃であっただろう。

 部外者の私が何を言っても空々しい浅はかな言葉にしかならない。

 しかし、一つ言えるとすれば生き延びてこうして被害の様子を伝えてくださりまことにありがたいと申し上げたい。

 必読本作。