Ending
メイルストロム
Untitled.
──
……名もなきそれは理外の外法により産み落とされた稚児であり、生きとし生けるものすべての命を呪う呪詛を言葉として吐き続ける在ってはならぬものでした。
あの稚児が感じているのは夥しい数の恨みと苦痛であり、それらは消せぬ焔となりて稚児を内より焼き続けているようなのです。
故に産み落とされたばかりの稚児は言葉を覚えるよりも先に呪詛を吐き続けています。
その身を焼く苦痛を言葉にすることすら許されず、大凡生物として許されぬカタチを成したそれは誰が望んだのでしょうか。
……おそらくそれを望んだものはおりません。ただ、亡国の民が死して肉の器を失ってなお侵略者への怨念を募らせ続けた結果なのでしょう。
繁栄と豊穣をもたらす筈の神は、その在り方とは真逆のモノを産み落とし亡くなられてしまったようです。そして産み落とされたモノの中身は観察しきれぬほどにぐしゃぐしゃで、直視するだけでも影響を受けかねません。
尽きぬ怨嗟の果てに産まれ落ちた稚児が与えるのは絶え間ない苦痛であり、すべての命を恨み害する呪詛なのです。
……こうなってしまっては何もかもが手遅れだと言わざるを得ません。
彼の者が抱きし愚かな好奇心が殺したのは己の未来であり、その果に産まれ落ちたのは未来をも犯す怨嗟の
──それを祓うだけのモノは未だ現れる兆しもありません。
……挑んだ者も在りましたが、それらは全て怨嗟に呑まれ禍津神の糧となりました。そうして育ち続けた禍津神はあらゆる呪いを取り込み、より凶悪な呪詛を吐き出しています。
なにもかもをぐしゃぐしゃに破壊し尽さなければ、アレは存在する意味を失うのだと言わんばかりに暴れ続けているのです。
────もしも
……この世界は最早、立て直すよりも焼却すべきかも知れません。どうか、正しい選択をお願い致します──
──
Ending メイルストロム @siranui999
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