第10話 勇者と魔法使いと闇魔道士のショートコント2

闇魔道士

おい勇者。我(われ)のバンダナを知らないか?


勇者

バンダナ?柄は?


闇魔道士

クマさんとウサギさんの柄だ。


勇者

随分意外なの持ってたんだな。


闇魔道士

正確にはクマさんがウサギさんを食い殺している柄だな。


勇者

そんなエグい柄のは見たことねえよ。


魔法使(まほうつか)い

勇者さん、私のネックレスを知りませんか?


勇者

お前ネックレスなんか付けてたっけ。


魔法使い

はい。付けたら必ず願いが叶う代わりに周りの人間が不幸になるネックレスを。


勇者

なんてもん付けてくれてたんだお前!もう探さなくていいからな!


闇魔道士

おい勇者。我のエプロンを知らないか?


勇者

お前もうコックだろ。ちなみにどんな柄だった?


闇魔道士

柄というか、返り血を浴びて赤黒くなっている。


勇者

知らない!そんな殺人鬼が付けてるようなのは知らない!


闇魔道士

ちなみにイチゴの返り血だ。


勇者

じゃあ果汁じゃねえか!!


魔法使い

ねえ勇者さん。私の人形を知りませんか?


勇者

お前が人形なんて可愛らしいもんを持ち歩いてるなんて意外だな。


魔法使い

勇者さんの顔が貼(は)り付けられた藁(わら)人形(にんぎょう)なんですけどねえ。


勇者

お前は俺をどうする気なんだ!?


魔法使い

はやく勇者さんが私以外の女から虐(しいた)げられ、気味悪(きみわる)がられ、見向きもされなくなりますように。と願っています。


勇者

毎度毎度 発想が怖すぎる!!!


闇魔道士

おい勇者。我の服を知らないか?


勇者

いつも着てるやつか?


闇魔道士

そうだ。あれしか持っていないから無くしたら困るのだ。


勇者

……じゃあ今何着てんだよ!


闇魔道士

バカには見えない……


勇者

全裸じゃねえかバカ!


闇魔道士

エプロンがあれば裸エプロンが完成するというのに……!


勇者

何を悔しがってんだ!


魔法使い

ねえ勇者さん、私の魔法の杖(つえ)を知りませんか?


勇者

お前それ大事なもんだろ。なんで無くしたんだよ。


魔法使い

うーん。昨日うつ伏せで寝ている勇者さんに突(つ)っ込んでおいたんですけどねえ。


勇者

どこに!?何を!?


魔法使い

奥まで入っちゃったのかなあ。


勇者

!?


闇魔道士

おい勇者、我の包丁を知らないか?


勇者

いや、見てないけど……。


魔法使い

あ、それなら私が勇者さんの藁人形を切るのに使わせてもらいました。


勇者

お前が人形切り刻んでたんじゃねえか!なんでさっき探してたんだよ!


闇魔道士

して、今包丁はどこに?


魔法使い

おかしいなあ。魔法の杖と一緒に勇者さんに突っ込んでおいたのに。


勇者

花瓶(かびん)か!?俺のケツは花瓶か!!


闇魔道士

いやパンドラの箱(はこ)だな。


魔法使い

いえ宝箱ですよ!


勇者

ケツの命名合戦してんじゃねえ!だれか早く抜いてくれ!


闇魔道士

まあそう焦るな。このシナモンティーを飲んで落ち着いたらどうだ。


勇者

落ち着けるかあ!!


魔法使い

落ち着いてください勇者さん。杖が刺さってようが、包丁が刺さってようが、私は勇者さんの味方ですよ!


勇者

お前が刺したんだろうが!


魔法使い

まあ本当は杖も包丁も刺してないんですけどね。


勇者

お前が言うと冗談に聞こえないんだよ……。


魔法使い

本当に刺したのは割(わ)り箸(ばし)だけです。


勇者

やっぱり刺してんじゃねえか!!!



おわり

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