第14話 勇者と魔法使いと闇魔道士のショートコント4
勇者
ヒーラーが欲しい。
闇魔道士
どうした藪(やぶ)から棒(ぼう)に。
魔法使い
そうですよ。私という魔法使いがいながらヒーラーが欲(ほ)しいとは何事ですか。
闇魔道士
聞けばこのパーティーには元々ヒーラーが居(い)たらしいではないか。
勇者
居たんだけどさ……。
魔法使い
どこへ行ったんでしょうね。
勇者
お前が脅(おど)すから逃(に)げちまったんだろうが!
魔法使い
だってあの女、勇者さんに色目使うんですもん。
闇魔道士
で、どうして急にヒーラーが欲しいと?
勇者
お前がメタルスライム戦(せん)で死にかけたからだよ。あの時たまたま別のパーティーが通りかかったから良かったけど、下手(へた)すりゃ死んでたからな。
闇魔道士
我は死など恐れぬ。死ねば我(わ)が魂(たましい)は闇(やみ)に帰(き)す。それだけのことだ。
魔法使い
試(ため)しに死んでみますか?
闇魔道士
やめて!まだ死にたくない!
勇者
そういうわけで今度ヒーラーを仲間にするためにギルドの掲示板(けいじばん)で募集(ぼしゅう)をしようと思うんだ。
魔法使い
ちゃんと募集(ぼしゅう)要項(ようこう)に「女不可」って書(か)いといてくださいね。
勇者
なんでだよ。
闇魔道士
あと「料理(りょうり)経験者(けいけんしゃ)優遇(ゆうぐう)」と書くのだ。
勇者
ヒーラー関係(かんけい)ねえ!
闇魔道士
もしくは「食材優遇」と。
勇者
人間が欲しいんだよ俺は!
魔法使い
能力も大事ですけど寝食(しんしょく)を共にするんですから性格も大事ですよね。
勇者
うんそれはお前を仲間にした時死ぬほど後悔(こうかい)したから分かってる。
闇魔道士
どんな性格なら良いのだ?
勇者
そうだな。優(やさ)しくて、芯(しん)が通ってて、明るくて、俺が落ち込んでたら励(はげ)ましてくれて、でもどこか儚(はかな)くて……。
闇魔道士
それは貴様(きさま)の異性への願望(がんぼう)ではないか。
魔法使い
そうですよ。しかもその条件に全て当てはまる私がここにいるじゃないですか。
勇者
ははっ。
闇魔道士
しかしこんな変人ばかりのパーティーに入りたがる奴がいるとは思えんがな。
勇者
自分で変人って分ってるんだな。
魔法使い
私だけはマトモですけどね。
勇者
ははっ。
闇魔道士
コチラから求めるだけでは良い人材は来ないだろう。良い待遇(たいぐう)を考えねば。
魔法使い
私という魅力的(みりょくてき)な魔法使いと一緒(いっしょ)に冒険(ぼうけん)できることが最高の待遇ですよ。
勇者
お前いい加減(かげん)にしろよ。
待遇は「まかない」付きって書こうと思ってる。
魔法使い
なんかバイトの待遇っぽいですね。
闇魔道士
そうだな、後は「闇(やみ)魔法(まほう)免許(めんきょ)取得(しゅとく)補助(ほじょ)」など書くのはどうだ。
勇者
何だその資格(しかく)は。あとヒーラーに闇魔法を教えるのはどうなんだ。
魔法使い
じゃあこの条件はどうですか!勤務(きんむ)時間(じかん)8時~22時。残業(ざんぎょう)あり。残業手当(ざんぎょうてあて)なし。
勇者
完全なブラック企業(きぎょう)じゃねえか!
魔法使い
こき使われても文句(もんく)を言わない優秀(ゆうしゅう)な奴隷(どれい)ヒーラーが集まりますよ!
勇者
発想(はっそう)が完全に無能(むのう)経営者(けいえいしゃ)だ!
闇魔道士
あと豚(ぶた)や牛など家畜(かちく)の方には「非常食(ひじょうしょく)手当(てあて)」が付きます。と書いておけ。
勇者
何を集める気なんだお前らは!
——なんやかんやで新メンバーの面接(めんせつ)が決まった!
つづく
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