第5話 勇者と町娘のショートコント

勇者

「ねえねえ町娘ちゃん。俺と魔王討伐へ行こうよ」



町娘

「え? 何なんですかあなた……?」



勇者

「俺は勇者! 世界を救う英雄さ!」



町娘

「で、でも私戦えませんし」



勇者

「いいのいいの! 戦えなくったって! 戦うのは俺だから!」



町娘

「で、でも私魔法も使えませんよ?」



勇者

「いいのいいの! 魔法使うのは俺だから!」



町娘

「でもでも私、自分に自信がなくて」



勇者

「いいのいいの! 空は青いんだから!」



町娘

「でもでも私、対人恐怖症だし」



勇者

「いいのいいの! 相手はモンスターだから! 俺も人じゃないし!」



町娘

「でもでも私、自分のベッドじゃないと眠れないし」

 


勇者

「いいのいいの! 君のベッドも背負っていくから!」



町娘

「でもでも私、お母さんの手料理じゃないと食べられないし」



勇者

「いいのいいの! 君のお母さんも連れていくから!」



町娘

「でもでも私、町の酒場で働いてて、私がいなくなるとみんな困るし」



勇者

「いいのいいの! 酒場ごと持っていくから!」



町娘

「でもでも私、学校にもいかないといけないし」



勇者

「いいのいいの! 1日6時間性教育してあげるから!」



町娘

「でもでも私、実は魔王側の人間だし」



勇者

「いいのいいの! 俺もダークサイドだから!」



町娘

「でもでも私、飼っている犬が心配で」



勇者

「いいのいいの! 俺が代わりに餌食べるから!」



町娘

「でもでも私、今読んでる小説の続きが気になっていて」



勇者

「いいのいいの! それ書いてるの俺だから!」



町娘

「でもでも私、最近ストーカーに付きまとわれてるみたいで」



勇者

「いいのいいの! それ俺だから!」



町娘

「でもでも私、毎晩誰かが枕元(まくらもと)に立っている気がするの」



勇者

「いいのいいの! それも俺だから!」



町娘

「でもでも私、毎日家に来る小鳥に餌あげないといけないし」



勇者

「いいのいいの! それも俺だから」



町娘

「でもでも私、酒グセが悪くて酔ったら暴力的になるの」

 


勇者

「いいねいいね! もっと殴って!」



町娘

「でもでも私、実は顔がアンパンで出来てるの」



勇者

「いいのいいの! 俺も愛と勇気と下心で出来てるから!」



町娘

「でもでも私、昨シーズン防御率3.54 で6勝12敗だったし」



勇者

「いいのいいの! ヤクルトならエースだから!」



町娘

「でもでも私、水に濡れると男になるの」



勇者

「いいのいいの! 俺どっちでもいけるから!」



町娘

「でもでも私、毎晩髪が1m伸びるの」



勇者

「いいのいいの! 俺も鼻毛が1日116m伸びてるから!」



町娘

「でもでも私、実は火星人だし」




勇者

「いいのいいの! 俺もヌベードゥ星人だから!」



町娘

「……分かりました。そこまで言うなら私、勇者さんについて行きます!」



勇者

「本当か!?」

 


町娘

「はい! じゃあ彼氏も連れていきますね」



勇者

「帰れ」




終わり

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