第7話 勇者と闇魔道士のショートコント1

闇魔道士

おい、貴様。



勇者

ん、俺か?



闇魔道士

貴様に我が力を託そう……!



勇者

早い早い! それ色んな手順を踏んだ上で最後にするトークだろ!

そもそも誰だよお前!



闇魔道士

我は闇魔道士。闇魔法を生業とする者なり。



勇者

お。なんか強そうだな。



闇魔道士

そうであろう。我は魔王討伐に必ず役立つぞ。さあ我と闇の契りをかわすのだ。



勇者

まあちょっと待て。この前ニセモノの闇魔道士に騙されてひどい目に遭ったんだ。お前が本当に闇魔道士だといえる証拠はあるのか?



闇魔道士

ではこの場で我が闇魔法を見せてやろう。



勇者

お。ちょうど町からも離れてるし、見せてもらおうかな。



闇魔道士

では闇魔法をお見せするためにですね。この闇の契約書にサインをお願いします。あ、拇印でもいいですよ。



勇者

はいここね。……って危ねえ! 流れるように契約させられるところだった!



闇魔道士

よくぞ見破った。



勇者

よくぞじゃねえよ! なんだよ証拠無いのかよ。



闇魔道士

……この「週間・闇魔道士格付け」という雑誌を見ろ。



勇者

そんなニッチな雑誌初めて見たわ。



闇魔道士

この雑誌には闇力10000位までの闇魔道士が載っておる。



勇者

随分多いな。



闇魔道士

我はこの雑誌にギリギリ乗るか乗らないかのラインからギリギリ外れている。



勇者

外れてんじゃねえか!



闇魔道士

我を格付けするとすれば上から数えて3億番目。



勇者

それは一般人。



闇魔道士

しかし我の闇力は雑誌などでは測りきれぬ!



勇者

さっきから言ってるその闇力って何なんだよ。



闇魔道士

闇力とは俗に言う心の闇。例えばそうだな、我が友達からなんと呼ばれていたか教えてやろうか?



勇者

……言わなくていい。



闇魔道士

カニだ!



勇者

何事だ!?



闇魔道士

これぞ闇力!



勇者

魔法関係ねえじゃんか!

お前が3億番目なら1位のやつが闇を抱えてる闇はどんなんだよ!



闇魔道士

おそらくイカであろう。



勇者

寿司屋か!

いいから早く魔法見せてくれよ。そしたら信じるからさ。



闇魔道士

では見せてやろう! 高等闇魔法! 「しゃっくり地獄」!!!



勇者

……ん? それってどんな魔法なの?



闇魔道士

死ぬまでしゃっくりが止まらなくなる魔法だ!



勇者

死ぬほど地味だな!



闇魔道士

そしてこれを貴様にうつ!



勇者

なんで俺なんだよ!



闇魔道士

もしうたれたくなければ我を魔王討伐に連れて行くのだ! さあさあ!



勇者

クソ! ……でも、なんでそんなに魔王討伐へ行きたいんだ?



闇魔道士

同級生を見返したいのだ! カニと呼ばれ続け! カニの真似をさせられ! ジャンケンではチョキ以外出すことを許されず! 悔しかった! だから我は闇魔法を磨いてきた!  このままカニで人生を終わるのは嫌だ! お願いだ勇者! 我を連れて行ってくれ!



勇者

……分かった。じゃあゲームで俺に勝てたら付いてきていいぞ。



闇魔道士

本当か! して、そのゲームとは?



勇者

いくぞー。最初はグー! ジャンケン!



闇魔道士

貴様ぁ!



――闇魔道士が仲間になった!



終わり

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