生きることで何を成すか

【死の律】ことハーデスは「自ら死を選ぶ者の心」を知りたいと願う。
一方で、侍である八剣十兵衛は、切腹による自死によって、贖いと八剣家の潔白を示そうとする。

十兵衛はハーデスの手によって地球とは異なる惑星――マーレに呼び出される。
そこで、ハーデスは十兵衛の自死への理由・想いを知り感謝を述べるものの、十兵衛が日本に帰るにはハイリオーレが必要だという。
ハーデスは十兵衛が日本に帰れるよう手を貸し、十兵衛はハイリオーレを高めるために、善行を積むことになる。

……というのが、本作の概略ですが、一番の特徴は、やはり十兵衛が『侍』である点でしょう。
十兵衛は常に、自らが八神家に仕える侍であるという自覚を持っています。
それは、マーレに召喚された後も変わりません。
八神家の殿に任された城を守れなかった責任から、介錯を伴わない切腹を望み、その死に様によって贖いと八剣家の潔白を示そうとします。

しかし、第5話であるように、侍として生き、侍として死ぬことこそ当然だと思っていた人生に疑問を持ってこなかった事実に行き着きます。
第15話では、切腹以前の自分の在り方を思い出しています。それは、八神秀治の側仕えとしてお役に立つということでした。

交易都市リンドブルムに行き着いた十兵衛は、八神の領地とは比べものにならない程に発展し、豊かな街並みに感動します。
そして、オーウェン公と出会い、自罰が過ぎることの戒めを説いてもらいます。

最後は十兵衛にとって呪いであったはずの「無病息災」――「不死」が、生の謳歌という解釈に変わり、この異世界で生きる意味を見いだします。

これは、死こそが最大の美徳であった十兵衛が、生きることで何を成すかを問い、それを手に入れる物語なのかもしれません。