あきつしまやまとのくには

・秋津志摩大和国の、武蔵竹浦に、左海日乃輪という少女がいた…。八歳の春、山菜採りの最中に、流れ者の男に襲われ、その男を持っていた小刀で刺し殺して以来、人々は彼女を「もののけ憑き」と呼んで恐れるようになった…。
竹浦に居づらくなった日乃輪は、親戚を頼って、遠く播磨の渡辺荘へ移り、そこで生涯の医の師匠となる、道薫和尚と出会う。道薫和尚とともに京へ移り、そこで蘭学に触れた日乃輪は、さらに和尚とともに肥前長崎へむかう。
そうして医学を学ぶこと六年、日乃輪は聡明で美しい少女へと成長し、親孝行をするために故郷の武蔵竹浦に帰る。
人々の誤解や偏見にさらされつつも、薬を商い、傷病人を治療し、子ども達に学問をさせようとする日乃輪。髪を肩のあたりで切りそろえた断髪で、袴着で馬に乗り、太刀を持ち歩く彼女にいいよる…続きを読む