世界を変えてゆく物語。

かつて魂を持つ剣だったものが鉄の仮面となり、装着者である女性レダとともに夫を破滅させた「業歪」なる存在と対峙していく、旅で巡り合った仲間とともに各地を次々と渡り歩いていくというロードムービー的な話運びが印象的な一作。
仮面をつけるに至った経緯など若干無理やりな印象も無きにしもあらずではありますが、仮面をかぶったヒロインという設定はインパクト充分、仮面の力が全身を覆って「銀の悪魔」と呼ばれる戦士になるという辺りは変身ヒーロー的でもあり、一般的な剣と魔法のファンタジーとしてもなかなかに異彩を放つものがあったように思います。
仮面とのバディ物のような趣きもあった前半部分から、後半以降佳境に差し掛かっていくにつれ世界の成り立ちを巡っていくSF風味の展開になっていくなど、ジャンルを踏み越えていく感覚が80年代の往年の日本SFもしくは黎明期のライトノベル風味でやや懐かしい印象も個人的にはあったように思います。
難を言えば中盤以降、作中でも力が弱まってると説明はあったとは言え仮面姿の容姿に関する言及が減っていくなど、「仮面の女」という異彩を放つ設定をやや持て余している感が少なからずあったように思います。また最終決戦の果ての結末についても本来は世界の再構築という一大スペクタクルがあったはずが、そこはさらりと流した感があったのがやや残念と言えば残念だったかも……。
ともあれ、一介の個人が罪人として仮面をまとったところから長い道のりの果てに自身が所属する世界の改変に関わっていく、そんな長い旅を読者もまた登場人物たちと一緒にしているかのような、読み応え充分の壮大なスケールの物語でした。