第29話

 燃えながらその剛腕を振るい、ダンジョンで荒れ狂う化け物二人

に対してダンジョンを自由自在に駆け巡り、ヒットアンドアウェイを繰り返すことで戦う僕。


「……きっついな」

 

 一撃でも当たれば死んでしまいそうな僕とどれだけ攻撃を与えてもビクともしない二人の化け物。

 結構きつい……。


「ご、ごめんね……私、全然役に立たなくて……」


 大剣を振り回して自分の方へと迫ってくる化け物を遠ざけている神桜さんが謝罪の言葉を口にする。

 神桜さんは大剣による高火力を売りとするアタッカーであるが、化け物には通じず、僕のように速度があるわけでもないので、化け物から逃げることも出来ずにちょいちょい僕が手助けして、なんとか命を繋いでいる。

 正直に言って足手まといなような気もするけど……二人のうちの片方のヘイトを少し買ってくれており、僕への圧力が少しだけ軽減されているので、足手まといであると断言出来ないくらいの活躍を神桜さんはしてくれていた。

 

「仕方ないよ……ッ!こいつは僕でも無理だしッ!」

 

「「ガァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」」


「……マジでどうしよ」

 

 一生懸命化け物に対して魔法やら短剣をぶつけているけど、本当に火力が足りない。

 魔法を覚えてこれで僕も火力不足解消だぁー!って喜んでいたのが馬鹿みたいに思えてくる残酷さ。


「……ちょっと本気でどうしようかなぁ」

 

 このままじゃジリ貧。

 僕はまだまだ体力的に問題ないが……神桜さんはこのままだと体力的にきついだろう。

 一応僕にだって自己加速による体への負担がある。

 あの巨大な狼の魔物と違って助けを呼んでくれる人もいない。


「『喰らえ、双頭炎獅子』」

 

「「ガァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」」

 

 僕がどうしようかと考えていた時、どこからともなく双頭の炎の獅子が疾走し、化け物を喰らい、地面へと叩きつける。

 僕の使う魔法とは威力の桁が違う魔法だ。


「天鳳さんッ!」

 

 僕は魔法が放たれた方に視線を向け、声を張り上げる。

 

「手助けに来たわよ」

 

 そこにはペアを片手に引きずり回し、僕たちの援護に駆けつけてきてくれた天鳳さんが居た。

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