第31話
鼓膜を揺らすほどの轟音と膨大な魔力の奔流がダンジョンを洗い流した後……そこに残っていたのは気絶した二人の人間であった。
「……人間?」
自分の魔法が化け物を倒した……そのあとに残ったのが二人の人間であると言う事実に天鳳さんは困惑し、首をかしげる。
「あぁ……そうだったわ。忘れていた。あの化け物、なんか人間が自分に注射を打った結果、あんな風になったんだよ」
突然の強い化け物をどうやって対処するかでいっぱいいっぱいで忘れてしまっていたが、あの化け物たちと戦うことになった発端があの二人組の人間なのである。
「……注射?」
「うん。そう」
僕は首をかしげながら告げた天鳳さんの言葉に頷く。
「……もしかして、滅能教会の」
「え?滅能教会?」
僕は天鳳さんの口から漏れ出た言葉を聞いて驚愕の声を漏らす。
滅能教会。
この世界にダンジョンが出来た理由を能力者にあるとし、能力者は全員殺すべきであるという思想を持ったヤバい組織である。
能力を持っている人間は総人口の一割ほど……能力者はマイノリティーなのだ。
LGBTQや障がい者など、社会的弱者であった人たちを普通の人間とし、すべての人が平等であり尊重されるべきであるというのが現代先進国の流れではなるが、能力者は弱者ではない。
能力者たちはLGBTQや障がい者たちと違い、自分たちマジョリティーよりも強者であり、それを助けることで自分たちの自尊心を満たされるようなことはない。
能力者たちマイノリティーは非能力者たるマジョリティーに差別される傾向にあり、滅能教会のように能力者たちは全員殺すべき!という思想を持った人間が少なからず存在するのだ。
まぁ、能力者たちにも自分たちは神に選ばれた者たちであり、非能力者たちを奴隷のように扱っていい!と考えているやべぇ奴らもいるからどっちもどっちなんだけど。
「えぇ。そうよ……滅能教会の連中が人間の限界を超え、化け物となることで強力な力を発揮出来るようになるような薬品を作り出したと……確か、私の父が言っていたはずだわ」
「……えぇ。もしかして、結構面倒なことに僕は首を突っ込んだ……?」
「かもしれないわね。とりあえずこの二人を縛って地上に戻りましょ。これは私たちが対処出来るようなものじゃないわ」
「うん。そうだね」
僕は天鳳さんの言葉に頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます