第30話

「助かるッ!」

 

 僕は駆け付けてきてくれた天鳳さんに向けて感謝の言葉を告げる。


「これくらい当然よ……それで、そこの女は私のペアの相手をしていなさい。あなたは足手まといよ」


「う、うん!わかった……だ、大丈夫?」

 

 いつも通りの笑顔を浮かべた神桜さんが化け物から離れて、ここに来るまでの間に天鳳さんに引きずられたのか、なんか気絶して悲しいことになっている同級生の元へと向かって介護する。


「よしっと……」

 

 そんな二人に視線を一つ送ることもない天鳳さんが前に出てきて魔法を発動する準備へと取り掛かる。


「あなたが前衛で。私が後衛。それで良いわね?」


「うん!任せた!」

 

「それはこちらのセリフよ」


 僕は火力源として攻撃することを止め、後衛である天鳳さんの元へと行かせないようヘイトを稼ぎ、敵の攻撃を避けていくスタイルへと変更する。


「一撃で終わらせるわ……『私は光。私は闇。相反する天位へと天を伸ばす者なり……』」

 

 天鳳さんのオッドアイの両目が光り輝き、長い長い詠唱へと取り掛かる。

 僕のミッションは天鳳さんの詠唱を途切れさせないよう、化け物の足止めをすることだ。


「……」

 

 僕の速度は圧倒的……理性なく荒れ狂うだけの二人の化け物のヘイトを買い続け、逃げ続けるなんて実に簡単だった。


「出来たわ……離れて!」


「りょーかい」

 

 それからしばらく二人の化け物から逃げ続けた僕。

 そんな僕へと天鳳さんは声をかけ、僕は天鳳さんの言葉に頷いて行動を開始する。


「これで終わりよ『アンチノヴァ』」

 

 天鳳さんが魔法を発動させ……僕の視界は真っ白に包まれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る