第6話
石畳、石の壁、石の天井……石に囲まれた道が複雑に絡み合い、迷宮となっているダンジョンの中。
「「「「ワォーンッ!!!」」」」
僕の前で遠吠えを上げ、四体の魔物が僕へと突進してくる。
遠くから見たパッと見の見た目は完全に狼のようにしか見えないその生物は……だが、額には巨大な角が生えており、口元から見える舌は一つでなく二つ伸びている。
地上にいる狼のような姿であっても、目の前にいる魔物たちは地上にはいない生物であるのだ。
「ほっ。せっ。よっ」
僕は『自己加速』も『時止め』も使うことなく足を動かして魔物の噛みつきを冷静に回避していき、刀を振るっていく。
「キャンッ!?」
魔法によって切れ味の上がっているその刀はいとも容易く魔物の体を斬り裂き、絶命に至らせる。
「ラスト」
僕は自分へと襲いかかってきた狼の魔物の群れをサクッと殲滅させ、刀を鞘へと戻す。
「うーん。やっぱ魔法は良いね……なんで発動しているのかはわからないけど」
後天的に覚えることの出来る魔法。
その覚え方は誰かから教わるのが普通らしいが……僕は魔法を教えてもらう相手がいないので、なんとなくの感で使っている。
多分記憶を忘れる前の僕は結構魔法を使えたのではないだろうか……記憶を失っていても、体は覚えているというやつだ。
「この階層は楽勝だな……もっと下へと降りていこうか」
今、僕が潜っているダンジョンの階層は第十三階層である。
ダンジョンは下へ下へと伸びており、幾つも階層が存在する……確か、最高到達階層が九十三階層だったはずだ。
僕が潜っている十三階層は中級者が潜るような階層である。
「っと、その前に魔石回収……」
更に下の階層へと潜るよりも前に、僕は狼の魔物の死体へと視線を向ける。
こいつら魔物の体内にある魔力はかなりの量のエネルギーを保有しており、燃やすと一切二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーを得られるのである。
「ふんふんふーん」
僕は狼の死体へとナイフを入れ、手早く解体して魔石をサクッと回収する。
「……思ったよりも小さいかな。他の三体は良いか」
僕は回収した魔石を背に背負っているリュックへと放り込み、下の階層を目指して走り出した。
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