第11話
どこを歩いていたのかどのくらい歩いていたのか分からない。まるで夢遊病になったみたいにふらふらと行くあてもなく歩き続ける。頬に当たる冷たい風だけがこれが現実である事を僕に分からせる。
ここは…公園か。引きずるような足取りでブランコに向かい腰掛ける。しん…と静まり返った夜の公園は今の僕の心を落ち着かせる。
「どした?今にも死にそうな顔して」
頭上から聞き知った声が降って来た。のろのろと顔を上げるとすぐ側に山仲さんが居た。どうやら声をかけられていることに気づいていなかったらしい。
「そんな顔してますか?僕」
うんうんと頷く山仲さん。よっ、と隣のブランコに腰掛ける。
「だから俺にしとけって言ったろ?」
山仲さんの優しさが心に刺さる。今は何にでも縋りたい。
「そっすね」
俯くと大粒の涙が溢れてきた。どこからこんなに溢れてくるのだろう。堪えきれなかった。山仲さんが居るのに。いや、隣に居るから泣けたのだろうか。
山仲さんは立ち上がりそっと僕の背中を包んでくれた。
はは、涙が止まんねーや。泣き過ぎて頭いてえ。
「冬で空気が澄んでいるから星がよく見えるなー」
背中越しに優しい声が聞こえる。
「お、見てみそういや今日は流星群だったな」
優しい声と体温に堪えきれずに嗚咽を漏らす。
「そうだ星に願いをかけよう」
星を見上げることは出来なかった。でも夜空にはきっとたくさんの星が流れているのだろう。
「どうか君がこれから先、泣かずに済むように」
俺が傍にいてもいいか?山仲さんが呟く。
子供のように泣き出した僕をあやす様に山仲さんは優しく抱きしめてくれる。
空には幾つもの星が軌跡を描いている。そのただひとつでもいい。
どうか願いを叶えて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます