第3話
いた。
視線の先にはあの人が居た。心臓が高鳴る、唇が微かに震える。
きっと寒さのせいだ。そんな訳無いことは分かっているのに。期待している自分への恥ずかしさを隠すように言い訳した。
僕は自分を落ち着かせる為に深呼吸しようと深く息を…
「おつさま、みつるん」
ぐっと吸い込んだところで急にこちらへ振り向き声を掛けられた。
げほっ。なんか変なところに入ったぞ、これ。
「どしたん?みつるん」
いや、あんたのせいだよ。下を向き手で彼を制しながら呼吸が落ち着くのを待った。
「いや、大丈夫す。貴一さん」
ふう、と一呼吸したところで貴一さんに向かい合った。どれくらい振りだろ。こうして二人きりで病院以外で会うのは。
ふと、貴一さんが僕の手元を見つめている。なんかあったっけ?
「みつるん、ポケモンパン買ったの?」
ポケモンパン?あー、さっきガタイのいいサラリーマンから貰ったこと忘れてたわ。
ポケモンパンも軽い衝撃だったが貴一さんに会えた嬉しさでそれも吹っ飛んでいたようだ。
「ああ、そういや貴一さんシール集めてましたね」
それを考えるとさっきのサラリーマングッジョブ!と言えなくもないな、うん。
「あとで食べますか、ポケモンパン。まずはメシ食ってから」
「そうすっか」
どちらからともなく手を繋いだ僕らは歩き出した。
雪は積もりだし二人分の足跡が続いていた。
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