壱師の花紅～四季の宴～

　雨が、降る。
　紅葉色の雨が、水平線の彼方まで。


　古くから読んで字のごとく、『神の宿』としてこんにちまで営まれている、知る人ぞ知る名旅館『彼岸屋』。

　現当主である彼岸鳴はとある事情により、単身で広島へと足を運んでいた。
　しかし道中困ったことに、彼は久々の慣れない遠征により目的地にうまく辿り着くことが出来ずにいた。

　そこに帰省中だという現地の大学生に声をかけられ、ともに目的地を目指すことになり——？


　これは、記憶の旅路を辿る、秋の都の物語。