紫煙たち消えたあと

 『待つのと待たされるのと、辛いのはどちらかねえ』とは太宰治の言らしい。まあ、借金の精算に絡む出来事で決してカッコいい顛末ではないのだが不思議と頭に残っている。

 本作は、ある意味では死者を悼む一節だ。この世に存在しない者を待っても有害無益なのは当然だが、後悔や未練は大なり小なり有害無益という言葉に縁を持つ。

 主人公からすれば、死者が生きている間に何かしらの変化を遂げるのを辛抱強く待っていたのだろう。それを共依存と捉えるのか友情と捉えるのかは読者次第だ。

 必読本作。

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