田舎の夏。ふたりの男の子の友情。そして「学校の怪談」という怪異

いじめられっ子の小学生ミコトは、夏休みを前に突然現れた転校生・零と友達になり、彼と二人で「学校の七不思議」に関わってゆくこととなる――

――という筋立てのお話です。
夏休みを前にした、浮き立つ空気と清々しさが同居した夏の日々に、ミコトは仲良しの友達とふたり、「学校の七不思議」の鍵なるものを探して学校の探索に臨みます。

神社で行った「こっくりさん」から始まるこの探索は児童文学のような瑞々しさと驚きに満ちた優しいおはなし――かと思いきや、怪異はやはり「怪異」。
日常から、怪異の領域へ、うっかり境界を踏み越えてしまったと気づいたときの、首筋の産毛が逆立つような「ぞっ」とする感覚。それが確かな筆致で描き出されています。

いわゆる「学校の怪談」や、それをモデルにした学校を舞台とするホラーゲーム、それらに通ずる不穏さ、いつかこの盤面がまるごとひっくり返ってしまうのではないかというあやうさが、明るく瑞々しい物語の裏側へ常に張り付いています。
その帰結がどこへ至るのか、というより、陰陽どちらへ向いた終わりを目指しているのか。

ミコトがいつか、それと気づかぬうちに取り返しのつかないところへ踏み込んで――それとも、既に踏み込んでしまっているのではないか。そんな一抹な不安を抱えながら、朗らかな一夏の探検の物語を追いかける。

タイトルか、あらすじか、キャッチコピーか。少しでも琴線に触れるものを感じたのであれば、是非読み進めてみてください。おすすめです。

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